線型独立

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線型代数学において、線型独立性の 2 つの僅かに異なる概念が用いられる[要検証]: ベクトルのの線型独立性と、ベクトルの集合の線型独立性である。

  • ベクトル添え字づけられた族線型独立な族 (linearly independent family) であるとは、族のベクトルを族の他の有限個のベクトルの線型結合として書くことができないということである。線型独立でないベクトルの族は線型従属 (linearly dependent) と呼ばれる。
R3 において線型独立なベクトル
R3 の平面において線型従属なベクトル
  • ベクトルの集合線型独立な集合 (linearly independent set) であるとは、(それ自身によって添え字づけられた族と見て)集合が線型独立な族であるということである。

これらの2つの概念は同値でない: 違いは、族では重複する元があってもよいが、集合ではいけない。例えば V がベクトル空間であれば、族 F: {1, 2} → V であって f(1) = v および f(2) = v なるものは線型従属な族であるが、その族の像の集合は線型独立な集合であるシングルトン {v} である。

どちらの概念も重要であり一般に使われ、ときどき文献においてさえ混同される。

例えば、3次元実ベクトル空間 R3 において、次の例がある:

ここで最初の 3 つのベクトルは線型独立である; しかし、4 つ目のベクトルは 9 掛ける 最初 足す 5 掛ける 二番目 足す 4 掛ける 三番目 に等しいので、4 つのベクトルを合わせると線型従属である。線型従属性その族の性質であって、任意の特定のベクトルの性質ではない; 例えばこのケースにおいて最初のベクトルを後ろ 3 つの線型結合として書くこともできる。

定義

 
:ベクトル空間 R2 の部分集合 {(1, 0), (0, 1), (-2, 1)} は非自明な線型関係 2(1, 0) - (0, 1) + (-2, 1) = 0 を満たすので線型従属である。他方 {(1, 0), (0, 1)} は線型独立である。

任意のベクトル v1, v2, ..., vn に対して

 

である。これを v1, v2, ..., vn自明な線型関係と呼ぶ。これは線型従属性と線型独立性の両方の非常に単純な定義を動機付ける。

線型従属

ベクトル空間 V部分集合 S が非自明な線型関係を満たすとき — すなわち、ある有限個の相異なるベクトル v1, v2, ..., vnSスカラー a1, a2, ..., an が存在して、(a1, a2, ..., an) ≠ (0, 0, ..., 0) かつ

 

を満たすとき — S線型従属一次従属)であるという。言い換えると、集合が線型従属であるとは、集合のベクトルの線型結合によるゼロベクトルの非自明な表示が存在することである。

線型独立

ベクトル空間 V の部分集合 S は線型従属でないとき S線型独立一次独立)であるという。明示的には、任意の有限個の相異なるベクトル v1, v2, ..., vnS とスカラー a1, a2, ..., an に対して

 

ならば (a1, a2, ..., an) = (0, 0, ..., 0) となるとき S は線型独立であるという[1]。言い換えると、集合が線型独立であるとは、集合のベクトルの線型結合によるゼロベクトルの表示が自明なものに限るということである[2]

文脈から明らかなときには単に従属、独立などと言うこともある[3]。また両方の定義において(厳密性に欠けるが部分集合 S ではなく)部分集合 S のベクトルが線型従属あるいは線型独立であるとも言うこともある[4]

より一般に、V K 上のベクトル空間とし、{vi | iI} を V の元でとする。族が K線型従属であるとは、 K の元の族 {aj | jJ}、[すべてが0]ではない、が存在して、

 

ただし添え字集合 JI の空でない有限部分集合である。

V の元の集合 X線型独立であるとは、対応する族 {x}xX が線型独立であることである。

同値なことだが、族が従属であるとは、元が族の残りの線型包に入っている、すなわち元が族の残りの線型結合であるということである。

空な族と言う自明な場合には定理が適用するために線型独立と見なされなければならない。

線型独立かつあるベクトル空間を張るベクトルの集合はそのベクトル空間の基底をなす。例えば、実数上の x のすべての多項式のなすベクトル空間は(無限)部分集合 {1, x, x2, ...} を基底として持つ。

幾何学的な意味

地理的な例は線型独立性の概念を明確にする助けとなるだろう。ある場所の位置を記述している人は「それはここから3キロ北で4キロ東」と言うかもしれない。これは位置を記述するのに十分な情報である、なぜならば地理的な座標系は 2-次元ベクトル空間と考えることができるからである(高度と地球の表面の曲がりは無視して)。その人は「その場所はここから北東に5キロ」と付け加えるかもしれない。この主張は正しいが、必要でない。

この例において「3キロ北」ベクトルと「4キロ東」ベクトルは線型独立である。つまり、北ベクトルを東ベクトルの言葉では記述できないし、逆もまたしかり。三番目の「5キロ北東」ベクトルは他の 2 つのベクトルの線型結合であり、ベクトルの集合を「線型従属」にする、つまり、3つのベクトルのうち1つは不要である。

また次のことにも注意しよう。高度が無視されない場合、線型独立な集合に第三のベクトルを付け加えることが必要になる。一般に、n 個の線型独立なベクトルは n-次元空間の任意の位置を記述するために必要である。

数ベクトル空間における例

R2 のベクトル

  •   のベクトル (1, 1)(−3, 2) は線型独立である。

実際 λ1, λ2 を二つの実数として  λ1, λ2 に関して解けば λ1 = 0, λ2 = 0 がわかる。

行列式による別法
別の方法は n 個のベクトルが線型独立であることとベクトルをその列として取ることによって形成される行列行列式が 0 でないことは同値であるという事実を用いる。

この場合、ベクトルによって形成される行列は

 

列の線型結合を次のように書ける

 

ある 0 でないベクトル Λ に対して AΛ = 0 かどうかに興味がある。これは A の行列式に依存し、それは

 

行列式が 0 でないから、ベクトル (1, 1) と (−3, 2) は線型独立である。

別のやり方で、n 座標の m ベクトルを持っていて m < n とする。このとき An×m 行列であり Λ は m 成分を持つ列ベクトルで、再び AΛ = 0 に興味がある。前に見たように、これは n 方程式のリストに同値である。A の最初の m 列、最初の m 方程式を考えよう; 方程式の全リストの任意の解は減らされたリストでも解でなければならない。実は、〈i1,...,im〉 が m 行の任意のリストであれば、方程式はそれらの行に対して正しくなければならない。

 

さらに、逆も正しい。つまり、m ベクトルが線型従属かどうかを m 行のすべての可能なリストに対して

 

かどうかをテストすることによってテストできる。(m = n の場合、これは上のようにただ 1 つの行列式を要求する。m > n ならばベクトルは線型従属でなければならないことは定理である。)この事実は理論に値する; 実用計算においてはより効率的な方法が利用可能である。

R4 のベクトル

R4 の次のベクトルは線型従属である。

 

実際、線型関係式

 

において、λ3 を任意として

 

とすれば非自明な関係を得る。

標準基底ベクトル

V = Rn とし V の次の元を考える:

 

すると e1, e2, …, en は線型独立である。実際、a1, a2, …, anR の元として

 

は、すべての i ∈ {1, …, n} に対して ai = 0 を意味する(  に注意する)。

函数空間における例

  • 実変数 t関数全体の成すベクトル空間 V において関数 f(t) = et, g(t) = e2tV は線型独立である。

実際、a, b を二つの実数として、線型関係式 af + bg = 0t任意の値に対して a(f(t)) + b(g(t)) = aet + be2t = 0 が成り立つことを意味する。et は常に 0 でないから、これで両辺を割れば bet = −a となり、右辺は t に依存しないから左辺 bet もそうであり、b = 0 が必要とわかる。このとき a = 0 である。

線型従属関係のなす射影空間

ベクトル v1, …, vn の間に成り立つ線型従属関係 (linuear dependence) の係数ベクトルとは、線型関係式

 

を満たす n 個のスカラーを成分に持つベクトル (a1, …, an) で少なくとも一つの成分が 0 でないものをいう。そのような係数ベクトル (a1, …, an) が存在するとき、n 個のベクトル v1, …, vn は線型従属である。

n 個のベクトル v1, …, vn の間に二つの線型従属関係式が与えられたとき、一方の係数ベクトルが他方の非零定数倍となっているならば、これら二つは同じ線型関係を記述するものとなるから、これら二つを同一視することには意味がある。この同一視の下で、v1, …, vn の間の線型従属関係の全体は射影空間を成す。

脚注

  1. ^ Dunford & Schwartz 1988, p. 36.
  2. ^ Friedberg, Insel, Spence, Stephen, Arnold, Lawrence. Linear Algebra. Pearson, 4th Edition. pp. 48-49. ISBN 0130084514 
  3. ^ Halmos 1995, pp. 3637.
  4. ^ Halmos 1995, p. 37.

参考文献

関連項目

外部リンク