MSX2+

これはこのページの過去の版です。まぬ (会話 | 投稿記録) による 2013年12月23日 (月) 12:13個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (パナソニック機種の持つ6MHzモードについて原理を加筆、さらにそれを脚注に分離する。同記述に見られたhzの表記をtypo。)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

MSX > MSX2+

MSX2+(エム・エス・エックス・ツープラス)とはMSX規格の一つで、1988年に発表された。

MSX1からMSX2へは大幅にグレードアップしたのに比べ、グラフィック機能の小改造や一部オプション規格の標準化にとどまり、MSX3の名称は冠されなかった。

主な仕様

 
V9958
  • CPU
    MSX1準拠
  • VDP
    ヤマハV9958
  • 画面モード
    SCREEN0~9:MSX2準拠
    SCREEN10・11:グラフィック256×212ピクセル×2画面 固定12,499色(ドット単位の色指定不可)+512色中16色(ドット単位に色指定可能)
    SCREEN12:グラフィック256×212ピクセル×2画面 固定19,268色(ドット単位の色指定不可)
  • メインメモリー
    64KB~
  • VRAM
    128KB
  • サウンド
    MSX1準拠
  • PPI
    MSX1準拠

この規格では、VDPにV9938を小改修して横スクロール機能と自然画モードが追加された、上位互換のV9958を搭載した。また、漢字ROMが標準搭載とされた。

詳細は各社でまちまちだったフロッピーディスク・ドライブ(MSX DISK-BASIC)の規格や内部スロット配置の標準化された。さらに規格上はオプションのままだが、内蔵の辞書ROMを使った日本語入力(MSX-JEなど)の採用、松下電器産業の開発したFM音源YM2413(OPLL)カートリッジ・FM-PAC規格取り込み(MSX-MUSIC)も行われた。いずれも多くの発売された機種には実装され、事実上標準化された。CPUやVDPなどの処理速度の向上は、規格の上では行われなかった。

システムの起動時には左右から横スクロールで大きいMSXロゴが現れ、メインメモリーの搭載容量がKB表記で表示された。市販された製品は64KB搭載のものだけだったが、拡張すればその分も加えての表示となる。

MSX2の一部機種では、メインメモリーのチップのCMOS化によりバイパスコンデンサーにより内容が保持されてしまい、電源を切っても5分近く内容が消えず、裏RAMに起動可能なROMイメージをコピーするとBASICなどが起動出来なくなる問題が起きていた。そのためMSX2+では、起動時にメインメモリーのROM識別IDに該当するエリアをクリアするようになった。またVRAMは、MSX2では消えていなかったSCREEN5のページ1が、起動時のスクロール処理に使用されるためクリアされた。

その他、平仮名など一部の8ドットフォントを変更し、SCREEN0で横2ドットが切れて読み辛くなる問題を改善した。なお、漢字モードではシフトJISコードを使用するため、ひらがなやグラフィック文字などのMSXフォントは文字化けする。

MSX2+規格に参入したのは、ソニー、三洋電機、松下電器産業の3社だけとなった。ヤマハはVDPとFM音源、東芝はZ80カスタムCPU(MSX-ENGINE2)などの部品を提供するのみになった。

発売された機種は全てキーボード一体型となり、セパレートタイプのマシンは発売されなかった。また、規格の上では必須ではないが大半の機種でFDDを1~2基搭載していたことから、供給ソフトのメディアの主流は完全にROMから価格の安いFDへと置き換わった。

MSX2の拡張オプションの標準実装化が多い規格のため、MSX2に各種オプションカートリッジを実装することで、VDP以外はほぼMSX2+相当の機能に出来た。VDPの新機能も、自然画モードは写真などの取り込みの静止画に特化した仕様のためタイトルなどに一部利用される以外に有効活用されることは少なく、横スクロール機能もMSX2でも制限・制約付きながら実現されており、MSX2+のアドバンテージは然程大きくなかった。そのためMSX用ソフトウェアは2+発売以降も、「要・漢字ROM」等の但し書き付きのMSX2対応がメインとなり続け、MSX2+専用ソフトは殆ど発売されず、多くはソフトウェア側で判定して若干の最適化が行われる程度の対応に留まった。

参入したメーカーと発売した機種

  • 三洋電機
    • WAVY70FD、WAVY70FD2、WAVY35
      BASICコンパイラ(「MSXべーしっ君ぷらす」相当)を内蔵。単漢字変換で、MSX-JEは内蔵しない。
      WAVY35は日本国内の一般向けのモデルではなく、FDD非搭載。70FD2はフロッピーディスクドライブを2機搭載。
  • ソニー
    • HB-F1XDJ、HB-F1XV
      ゲーム開発ツールディスクを付属、筐体はMSX2のHB-F1XDシリーズから流用。MSX-JEを内蔵。漢字ROMにはJIS X 9051のビットマップフォントが使用されている。XDJは1年ほど使用しているうちにFM音源の音が小さくなるという回路の不具合があり、メーカーでコンデンサー交換による対応を取っていた。またメモリーは64KBながらハード的にはマッパーRAMとなっており、ページを跨いでのセグメントの移動が可能となっている。メモリマッパー規格は最低128KBで切り替えBIOSがなくてはならないので厳密にはメモリマッパー対応ではない。
      XVは本体のカラーリングを変更してバンドルソフトウェアを充実。F1シンセサイザー(シンセサウルス相当品)、F1ツールディスク(グラフィックエディター、らくらくアニメ、ボイスレコーダー、BASICファイラー)、文書作左衛門(ワープロソフト)。
 
FS-A1WX
  • 松下電器産業(現パナソニック)
    • FS-A1WX、FS-A1FX、FS-A1WSX
      Wシリーズはワープロ内蔵、FXはFM音源・MSX-JEなし。WSXはS端子を付けた代わりにカセットテープ端子を削除(改造して後付けすることは可能)。MSXの規格ではCPUは通常3.58MHzで動作するが、内蔵ワープロを高速に動作させる為に実装された6MHzモード[1]を持っており、BASIC等からも利用が可能であった。BASICより「OUT 65,154」と打ち込むなどの方法でI/Oポートに規定の値を出力することで、入力周波数が変化する。ただしMSX-ENGINEに対する入力周波数が変化することから、PSGの音程など、そのクロックを拠り所としているものは全て影響を受ける。MSXの規格に存在するポートではないので、その場所にデバイスが繋がっていなければ対象機以外では無反応である。

脚注

  1. ^ 10.7MHzのオシレータ出力を2分周したものであり、実際は5.38MHz。通常はこれを3分周して規格のクロックを生成するため、理論上1.5倍速の動作が可能。