Blu-ray Disc
Blu-ray Disc(ブルーレイディスク、BD)はソニー、松下電器産業などが提唱する次世代の光ディスク規格の一つ。
DVDの次の世代、405nmの青紫色レーザーを利用して記憶容量を増加させ、デジタルハイビジョン放送に対応できるディスクとして規格を策定中。ライセンス供与も開始されている。競合規格として、東芝、NEC、サンヨーが現行DVDと似た構造をもつ「HD DVD」を策定中。
沿革
2002年2月19日、ソニー・松下など9社がBlu-ray Disc(BD)の規格を策定したことが発表される。その中にDVDフォーラム中核企業の東芝が含まれていなかったことから、次世代光ディスクの規格分裂が早くも予想された。
2003年、まず録画機器と録画用書き換えメディアから製品化が始まる。(後述)
2003年、ソニーはBDを独自にカスタマイズした「プロフェッショナルディスク」を開発し、業務用のハイビジョン録画・編集機器に採用した。容量は23.3GB(片面一層)。
2003年8月29日、東芝とNECがBDに対抗する形で次世代DVD候補の「AOD(仮称)」をDVDフォーラムに提案した。同年11月26日、DVDフォーラムはAODをHD DVDの名称で正式承認した。これで規格分裂が現実のものとなった。
2004年5月、上記9社などによる規格策定団体「Blu-ray Disc Founders」が「Blu-ray Disc Association」と改称・発展し、より多くの支持を得るための活動を本格化させた。
2004年9月21日、ソニー・コンピュータエンタテインメントが次世代ゲーム機「プレイステーション3」にBD-ROMを採用することを発表。他の仕様がほとんど発表されない中で採用メディアのみを強調したことは、次世代DVDの規格争いに先手を打ちたい狙いがあったものと思われる。2005年12月現在では、この狙いが当たってBDの優勢に一役買ったようである。
次世代DVD規格の行方に決定的な影響力を持つ大手ハリウッド映画企業は、2005年までにソニーピクチャーズ・ディズニー・20世紀FOXのBD陣営と、HD DVDを支持するパラマウント映画・ユニヴァーサル映画・ワーナー・ニューラインシネマの2陣営に分かれた。両陣営の現世代DVDでのシェアは拮抗しており、次世代規格をめぐる争いは激化の一途をたどった。その争いはかつてのベータマックスとVHSによるビデオテープ争い以上といわれてきた。
2005年の春から夏にかけて、両陣営(特に東芝とソニー)の間で2規格を統合するための協議が行われたものの、物理構造の差が大きいことなどで決裂した。両陣営の製品化のスケジュールが迫る中で規格が分裂したまま発売されることがほぼ確定した。
2005年10月、HD DVD陣営のパラマウント映画、そしてハリウッド最大手でHD DVD陣営の中核企業であるワーナー・ブラザーズグループがBD陣営にも参加することを表明。これでHD DVDのみを支持するハリウッド企業はユニヴァーサル映画のみとなった。ハリウッド映画ソフトの売上シェアの約8割がBDを支持することになり、BD陣営が大きく有利に傾いた。
同じ頃、コンピュータ業界最大手のマイクロソフトとインテルはHD DVD支持を表明した。主な要因はパソコン等と連係できる著作権保護の柔軟性によると主張。しかし2規格の実質的な差はそれほど大きくなく、背景にはマイクロソフトがWindowsやXbox 360など自社製品との親和性が高いHD DVDを推進する狙いや、ライバル製品であるプレイステーション3への揺さぶりをかける狙いがあると囁かれ、BD陣営の反発を買った。
2005年11月18日、米ソニー・ピクチャーズがBlu-rayの第1弾タイトルとして『チャーリーズ・エンジェル フルスロットル』をハードウェアメーカーのテスト用に出荷したことを発表した。
東芝は2005年内にHD DVDプレーヤーを発売する予定だったが、米国での発売を2006年春に延期した。これはBDとHD DVDを同時に立ち上げたいとするハリウッド企業の意向によるものである。日本では予定通り発売するとしていたものの、著作権保護規格AACSのライセンス供与が遅れたため年明けに延期され、BDプレーヤーより先に発売して優位に立とうとした当初の計画は大きく後退した。
そして2006年になり規格戦争が本格化した。
現在、Blu-ray DiscがHD DVDに比べて技術面で明らかに優勢であるとする予測が数多く発表されているが、ディスク製造コスト面への懸念や、マイクロソフトによる横槍を不安視する声もある。
特徴
フォーマット策定の順序
DVDでは読出し専用規格(ROM型)を先に策定し、書込み型フォーマットの策定において規格乱立の状態になってしまった。その反省からBlu-ray Discでは書込みメディアフォーマットを先に策定し、共通の仕組みで読出し専用メディアにも対応する方向で開発を進めている。また、現行メディアとの併用も考慮し、波長や基板厚が異なるCD/DVD/Blu-ray Discを、1つの光ヘッドで対応するための技術開発も当初の段階から行われた。
ファイルフォーマット
ファイルフォーマットはUDF Ver2.5以降を採用し、DVD-RAMのようにリムーバブルメディアとしての手軽さで扱えて、PCとの親和性が高まる事や、書込み時のファイナライズ処理を必要としないメリットもある。※UDFはBD-RE Ver2.0以降で採用
転送速度
等速は36Mbps。速度は6倍速(36Mbps×6=216Mbps)まで対応予定。
2005年秋のCEATECで、転送レート72Mbps(2倍速)のディスク(TDK製)が参考出展された。
保護層
Blu-ray Discの最大の特徴として、保護層が0.1ミリであることが挙げられる(DVD、HD DVDは0.6ミリ)。理論的には12層構造にすることができるが、現時点の技術力では実現は難しいという声が上がっている。2004年9月現在、8層構造まで試験段階にあり、これが実現すると1枚のディスク(25GB×8層)で容量が200GBを超える光ディスクメディアの誕生となる。
実験室のレベルでは片面4層の書換え型 / 100GB・2倍速ディスクも完成済(2005年10月20日時点)
ディスクの耐久性問題
Blu-ray規格の機器や対応ディスクが発表された当時の技術では、対応メディアの表面に些細な汚れや傷が付いただけでそのメディアが使用不能状態に陥るほどの脆弱性に悩まされ、その対策としてカートリッジ内にディスクを密閉する方式を採用した。
カートリッジを必要とする分だけディスク全体が大き目となる為、ディスク自体の取り扱い性の悪さやノートパソコン等向けの小型ドライブを開発する事が難しいという点がBD普及を図る為の大きな障害となっていた。
問題点の解決へ
BD-ROM や BD-R は規格制定当初からライバルのHD DVDと同様にカートリッジを必要としないベアディスクとなる事が決定し、BD-REも後にバージョン2.0でDVD-RAMと同様にベアディスクにも対応させる事が決まった為、それを実現する為の新技術開発が急務となった。
そこでTDKが、ディスクの耐久性向上技術「DURABIS(デュラビス)」を開発、BDメディアの標準仕様に採用された。
DURABISにより、傷や汚れなどによる問題や小型ドライブの問題も解決可能の目処が立ち、HD DVDに対して対等な条件、もしくはそれ以上の好条件が揃うこととなった。
なお、TDKはBD陣営であることもあり、HD DVD向け用途のDURABIS相当の技術を開発及び供給する動きは見られない(2005年12月現在)。
TDK DURABIS技術
DURABIS(デュラビス)は、DURABILITY(耐久性)とSHIELD(盾/保護物)からの造語で、優れた耐久性を表現している。
DVDに最適化したものを「DURABIS1」、BD用を「DURABIS2」、放送用を「DURABIS PRO」としている。DURABIS技術は次世代光ディスク向けに開発された技術であり、後にDVD、BD用途へと採用された。既にDVD-Rなどで『超硬』『UV超硬』ブランドを掲げた製品を発売しており、2005年12月に「DURABIS2」を採用したBD-R/REディスクをサンプル出荷している。
その特徴
DURABISは、静電気の高い放電性や、各種の汚れを弾き、UVプロテクト機能も有する。また、ディスク表面を数百回擦っても傷がつかず(従来の技術では数回擦っただけで使用不能レベルになっていた)、エラー値も変わらない事が実証済である。
- 例えば、油性マジックのいたずら書きを拭き取る為にタオルでかなり力を込めて何十回と擦っても細かな傷さえ皆無であり、スチール製のタワシで擦っても傷が付かず、指紋が付いても安定した読取りが可能と言う驚異的な性能を誇る(TDK、及び各A/V誌が行ったテストで実証済)。
- UVプロテクトに関しても、1時間に渡って12メガルクス(一般的に太陽光が0.1メガルクス)という強烈な光を加えた時点でようやくエラーレートが変化するなど、従来の書き換え(書き込み)系メディアの保存性における大きな泣き所であった紫外線にも強いことが実証されている。
従来の技術と比べるとコストは高いが、耐久性や保存性に優れている点が信頼性を重視するユーザーを中心に支持を集めている。
小型メディア
12cmディスクの他に、ビデオカメラ向けの用途での使用等を目的とした8cmディスクも策定中。容量は1層で7GBとなる。
環境への配慮
凸版印刷とソニーは、材質の51%以上が紙のディスクを共同開発した、と2004年4月15日に発表した。これにより、雑誌付録等の用途における環境への配慮が見込める。近いうちに、紙の割合を70%以上まで引き上げると発表している。また、日本ビクターやパイオニアはトウモロコシの澱粉から合成された植物原料のプラスチックによるディスクを開発した。両社の技術や原料は同じであるが、製法が若干異なる。
用途<映像メディア用途>
BD-Video 採用コーデック(動画圧縮/伸張技術)
H.264/AVCとVC-1は圧縮率が高くMPEG2よりも優れているとされるが、ハリウッド企業はコーデックとして実績がないことと、低ビットレート時の画質に問題があるとされている理由などから採用に消極的なようである。大容量のBDでは圧縮率を上げる必要性が少ないことから、MPEG-2の方が多く採用される可能性がある。
BD-Video 採用コーデック(音声圧縮/伸張技術)
- PCM
- ドルビーデジタル(AC-3)
- ドルビーデジタルプラス (DD+)
- ドルビーデジタルロスレス
- DTSデジタルサラウンド
- DTS-HD
インタラクティブ技術
高度なメニューやネットワーク機能などを実現する技術としてJavaが採用された。一方HD DVDではマイクロソフトが中心となって開発した「iHD」が採用され、マイクロソフトがHD DVDを支持する要因の一つとなっている。BDでもiHDを採用する提案がなされたが採用は見送られた。
コンテンツ管理システム(著作権保護技術)
3つの技術を使用しコンテンツの保護を図る。これら3つの技術により、海賊版の作製、及びその視聴は実質不可能となる。
- AACS(Advanced Access Content System)
- ROM Mark
- BD+
「AACS」の特長
コピー管理も含め、ネットワーク機能やインターネット接続に関連して、公認されたセキュアな方法でコンテンツを保護する。
AACSのカバー範囲は、TV放送およびインターネットを利用したコンテンツ配信、家庭内のネットワーク配信など、現在想定できる使用用途のほぼ全てと広範囲に渡る。また再生専用メディアだけではなく記録型メディアにも対応し、コンテンツのムーブやDRMによって認められたコンテンツの複製をセキュアに管理する。
- 暗号方式に「AES(Advanced Encryption Standard)」を採用
- 暗号鍵の長さは 128 ビット
- リボークシステムによる不正な機器、メディアによる使用をガードする排除機能を搭載
- 固有ID情報:メディアに「ユニークID」と「MKB(Media Key Block)」が書き込まれる。※ドライブ側にも機器毎に固有の鍵を導入(検討中)
- ウォーターマークによるコンテンツプロテクションの導入(検討中)
- HDMIの必須化によるアナログ映像・音声出力の禁止(緩和する方向で検討中)
「ROM Mark」の特長
BD-ROMの原盤の偽造を困難にする技術である。
映画や音楽、ゲームなどBD-ROMメディアに収録されるコンテンツに検出できない一意の識別子を埋め込む。ライセンスを受けたBD-ROMメーカーに提供される機器でしか扱えず、スタンパーを入手しただけではこの識別子は書込めない。その為、ディスク原盤の非正規の作製は極めて困難とされている。
「BD+」の特長
Blu-ray独自の機能である BD+ は、Blu-ray Discプレイヤーのコンテンツ保護プログラムが破られた際にも、BD+を使えば新たなコンテンツ保護プログラムをBDプレイヤーに導入できる機能である。
破られたコンテンツ保護プログラムをコンテンツ企業が後から動的に更新できる為、非正規に複製されたディスクの視聴は実質不可能となる。尚、BD+はキーが改変されたプレイヤーのみに影響する。
リージョンコード
リージョンコードは廃止の方向で検討されていたが、最終的には残されることになった。
地域コード
- 1.南北アメリカ・中国を除く東アジア(インド・日本・朝鮮半島など)・東南アジア
- 2.ヨーロッパ・アフリカ緒国
- 3.中国・ロシア・それ以外の地域
ネットワーク用途の考慮
ネットワークを利用した用途も考慮されており、ネットからダウンロードした字幕データをディスクに追記するような事が可能となっている。
用途<ITメディア用途>
パソコン向けの記録・再生ドライブは2006年に製品化される予定。主な用途になると思われるパソコンを使ったハイビジョン映像・デジタル放送の保存には課題が多いため、家電分野に比べて普及が遅れる可能性が考えられる。
マイクロソフトは自社開発の次世代OSでHD DVDのみを標準サポートすると表明しているが、主なDVDライティングソフト開発元各社は既にBDへの対応を表明しており、実際の使用でBDに不利益が生じることはないと考えられる。
Blu-ray Disc規格の採用例
- ソニーは2003年4月10日に片面1層記録(23GB)対応のBDレコーダー「BDZ-S77」を発売し、複数のメーカーからディスクが発売された。しかし、同機種は25GBディスクに非対応な事、地上デジタルチューナーが後付けなど、後発の2機種に比べるとスペックが劣る。
- 松下電器産業は2004年7月31日に片面2層記録(50GB)対応のBDレコーダー「DMR-E700BD」を発売した。
- シャープは2004年12月9日に片面1層記録(23GB/25GB)対応のHDD・DVD・BD一体型(3 in 1)レコーダー「BD-HD100」を発売した。HDDを搭載したハイブリッドタイプのBDレコーダーとしては業界初の製品となる。BDレコーダーとして初めてHDMI端子を装備した。i.LINK端子を装備してHDD・DVD・D-VHSからBDへのムーブが可能(DVDからBDへのデジタルダビングは世界初)であり、同社製のハイビジョンディスクレコーダー(DV-HRD2/20/200等)からBDへのムーブも可能となっている。
- プレイステーション3における標準メディア規格として採用される。これによりハードウェアの大規模な普及が見込め、HD DVDとの競争においてBD支持企業を増やす大きな要因となっている。
- パイオニアや日本ビクターも技術展示会などにBDレコーダーの試作品を出展している。
Blu-ray Disc Association(BDA)参入企業
ハードウェア・ソフトウェア関連企業
エンタテインメント関連企業
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注:太字はBDAの中核企業(Board of Directors)。(※)印はHD DVDにも参入を表明している企業。
参考:
フォーマットの種類
ベアディスク、カートリッジはオプション。最大容量は27GB(1層)と54GB(2層)。
BD-RE (Blu-ray Disc Rewritable)
書換え型。
Ver.1.0
ファイルシステムは、BD-FS。対応機器は発売済み。カートリッジ入りのみ。
Ver.2.0
物理フォーマットは、Ver.2.0が2005年10月に策定予定。2倍速記録に対応。 ファイルシステムは、UDF2.5。 論理フォーマットは、2004年7月に策定。
BD-R (Blu-ray Disc Recordable)
ライトワンス。松下電器は、記録層に従来の有機色素に代わって、TeO2にPd微粒子を配した薄膜を使用して、不可逆的な書き込みが実現したメディアを発表している。
Ver.1.0
物理フォーマットは、Ver.1.0が2004年9月に策定予定。 2倍速記録に対応。
Ver.1.1
2005年に、4倍速記録対応、100GB(4層)で予定。150GB(6層)の可能性もある。
Ver.2.0
ファイルシステムは、UDF2.5。 論理フォーマットは、2004年7月に策定。
BD-ROM
読み出し専用。
Ver.1.0
物理フォーマットは、2004年6月に策定。ファイルシステムは、UDF2.5。 論理フォーマットは、2005年内になる見込み。
特殊なBD
BD-DVDコンビネーションROMディスク
日本ビクターが開発したBD1層+DVD2層の計3層構造のディスク。BDドライブ、DVDドライブどちらでも読み込みが可能。現在、BDAに技術の規格を提案中。