「ランゴバルド人」の版間の差分
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=== ローマ領内への移動 ===
[[ファイル:Lombard state 526.png|thumb|right|250px|[[パンノニア]](現[[スロバキア]]・[[ハンガリー]]付近)における分布([[6世紀]]前半)]]
[[540年]]頃、ワコーは死んだ。ワコーは自分の息子である{{仮リンク|ワルタリ (ランゴバルド王)|label=ワルタリ|en|Walthari}}に王位を継承させるため、自分の即位時に甥である[[リシウルフ]]を追放していた(ランゴバルド部族法では彼が次の正統な王位継承者であった。)<ref name="久野1971p44"/>。これによりワルタリが王位を継ぐことができたが、彼の治世は短命に終わり、{{仮リンク|ガウス家|it|Gausi}}の{{仮リンク|アウドイン|en|Audoin}}が王位についた<ref name="久野1971p42">[[#久野 1971|久野 1971]], p. 42</ref>。当時東ローマ帝国はユスティニアヌス1世の下、イタリア半島の支配権を[[東ゴート王国]]から取り戻すべく長い戦争の最中であった([[ゴート戦争]])。イタリア半島に交通の便が良いドナウ中流域で急速に勢力を拡大したランゴバルド人は、東ローマ帝国にとって戦略上無視できない存在となっていた<ref name="久野1971p42"/>。[[546年]]にユスティニアヌス1世はランゴバルド人を味方とするためアウドインと盟約を結び、巨額の年金を与えること約すとともにノリクム、[[パンノニア]]への移住をランゴバルド人に許可した<ref name="久野1971p42"/>。この時初めてランゴバルド人は「ローマ帝国領」に移住した<ref name="久野1971p42"/>。この結果、後にユスティニアヌス1世はイタリアでの戦いにおいて、同盟軍(フォエドゥス foedus)となったランゴバルド人から援軍を得る事ができた<ref name="久野1971p42">[[#久野 1971|久野 1971]], p. 42</ref>。しかしアウドインと彼の指揮するランゴバルド人は東ローマ帝国が期待したような従順な同盟者ではなく、[[548年]]には[[ダルマティア]]と[[イリュリクム]]を寇略し、多数の住民を奴隷として連れ去るなどの
ローマ領内でも急激に勢力を拡張するランゴバルド人は、同じくローマ領内の[[シルミウム]]に拠点を置いて勢力を持っていた[[ゲピド族]]([[ゲピド王国]])と対立するようになった<ref name="久野1971p44">[[#久野 1971|久野 1971]], p. 44</ref>。更にワコー王に追放されたリシウルフの息子、[[イルディゲス]]を巡るランゴバルドの内紛が事態を悪化させた。[[イルディゲス]]は自分がランゴバルドの王位継承者であるとし、その正統な地位の回復への支援をゲピド王に求めた<ref name="久野1971p44"/>。[[547年]]と[[549年]]には軍事衝突に至る可能性のある危機があったが、この時は実際の戦闘に入る前に和平が行われた<ref name="久野1971p44"/>。イルディゲスはゲピド族から期待した支援を得られないことを悟ると、一時[[スラブ人]]の下に身を寄せ、その後独自にランゴバルド人、ゲピド人、スラブ人からなる混成軍を率いて東ゴート王国と結ぶべくイタリアへ向かい、ゴート戦争に参加して東ローマ軍と戦うなど流転の人生を歩んだ<ref name="久野1971p44"/>。イルディゲスが去った後も両部族の対立は続き、[[551年]]に遂に軍事衝突に発展し、ランゴバルド人はゲピド族を打ち破った<ref name="久野1971p44"/>。しかしランゴバルド人が過剰に勢力を拡大することを望まなかった東ローマ帝国は、両部族の和平を画策して介入し、結局ゲピド族を完全に滅亡させることなく和平が結ばれた<ref name="久野1971p44"/>。その後、ランゴバルド人は東ローマ帝国の同盟軍としてゴート戦争に参加し、[[552年]]には東ゴート王[[トーティラ]]を戦傷死させるなどの活躍を示したが、占領した都市で放火略奪を欲しいままにし、教会に避難した婦女に暴行を加えるなど暴虐の限りを働いた<ref name="久野1971p45">[[#久野 1971|久野 1971]], p. 45</ref><ref name="松原2010ランゴバルディー"/>。このため激怒した東ローマ軍の司令官[[ナルセス]]によって護送軍付きでイタリアから退去させられた<ref name="久野1971p45"/>。
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