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[[Image:Tommaso - Summa theologica, 1596 - 4593718.tif|thumb|''Summa theologica'', 1596]]『'''神学大全'''』(しんがくたいぜん、{{lang-la-short|Summa Theologiae, Summa Theologica, Summa}})は、「[[神学]]の要綱」「神学の集大成」という意味の題を持つ中世ヨーロッパの神学書。[[13世紀]]に中世的なキリスト教神学が体系化されると共に出現した。一般的には[[トマス・アクィナス]]の『神学大全』が最もよく知られているが、他にも[[:en:Alexander of Hales|ヘールズのアレクサンデル]]や[[アルベルトゥス・マグヌス]]の手による『神学大全』も存在する。
 
『神学大全』の特徴は、当時の神学において用いられていた『命題集』(センテンティエ)や『注解』(コメンタリウム)にばらばらに記されていた内容を有機的に分類し、体系的に整列し直しているところにある。つまり、聖書の言葉や[[教父]]・神学者の言葉が抜書きされていたものをわかりやすくまとめなおしているのである。さらに中世の司教座聖堂付属学校や大学において盛んにおこなわれた討論や解釈の成果が盛り込まれている。
 
以下本項ではトマス・アクィナスの『神学大全』を例に詳しい内容について述べる。
 
==成立==
『神学大全』はトマス・アクィナスの数ある著作の中でも最も有名なものであるが、序文の言葉によれば神学の初学者向けの教科書として書かれたものであるという<ref name="#1">稲垣良典『トマス・アクィナス』、講談社学術文庫、pp.246</ref>。決してキリスト教徒でない人々を想定して書かれているわけではないが、それでもきわめて明快に理性と啓示(信仰)の融合がはかられ、読者がキリスト教信仰に関する事柄でも理性で納得できるように書かれている。そして「大全」を名乗る以上、それまでの神学において扱われたあらゆるテーマについて論じようという意欲作であった。
 
『神学大全』はトマス・アクィナスのライフワークであり、彼の生涯の研究の集大成であった。彼はそれまでに『対異教徒大全(Summa Contra Gentiles)』という書を書き上げているが、『神学大全』はその成果も踏まえて、より洗練されたものになっている。
 
トマスは[[1265年]]ごろから『神学大全』の著述にとりかかっているが、第三部の完成を目指して著述を続けていた[[1273年]][[12月6日]]、[[ミサ]]を捧げていたトマスに突然の心境の変化が起こった。神の圧倒的な直接的体験をしたと伝えられている。『神学大全』も秘跡の部の途中まで完成していたが、彼は以後一切の著述をやめてしまう<ref>稲垣良典『トマス・アクィナス』、講談社学術文庫、pp.228</ref>。
 
[[1274年]][[3月7日]]にトマスが世を去ると、残された弟子たちが師の構想を引き継いで第三部の残りの部分(秘跡と終末)を完成させた。
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==構成==
=== 全体構成 ===
『神学大全』は以下のような三部構成からなっている<ref>稲垣良典、『トマス・アクィナス』、講談社学術文庫、pp.246< name="#1"/ref>。第一部は119の問題が、第二部は303の問題が、第三部では90の問題が、合計512の問題が取り上げられている。
 
*第一部 : '''[[神]]'''について、119問
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***問90-108 : [[法]]
***問109-114 : [[恩寵]]
**第2部 : 189問<br/>&nbsp; 【[[対神徳]]】
***【対神徳、神学的徳】
***問1-16 : [[信仰]]
****問171-2216 : [[希望信仰]]
****問2317-4422 : [[希望]]
****問4523-4644 : [[知恵]]<br/>【[[枢要徳]]([[四元徳]])】
****問4745-5646 : [[思慮ソピアー|知恵(智慧/英知/叡智)]]
***【[[枢要徳]]([[四元徳]])】
***問57-122 : [[正義]]
****問12347-14056 : [[勇気思慮]]
****問14157-170122 : [[節制正義]]
****問1123-16140 : [[信仰勇気]]
****問57141-122170 : [[正義節制]]
***問171-174 : [[預言]]
***問175 : [[携挙]]
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***問84-90 : [[ゆるしの秘跡|ゆるし]]
 
全体の構成としては、第一部で、神による創造を描き、第二部で神へと向かう理性的被造物である人間の運動について描き、第三部で、神へと向かう際の道しるべであるキリストについて描くという構想に基づくもので、[[ネオプラトニズム]]的な発出と還帰の原理を超えて、聖書に記された出来事を理解するためのキリスト中心的、救済史的な世界観があった<ref>稲垣良典『トマス・アクィナス』、講談社学術文庫、pp.67-69</ref>。
 
=== 叙述形式 ===
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== 内容 ==
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==『神学大全』に引用される学者たち==
『神学大全』に引用される学者たちは当時の神学において大きな影響力を持っていた人々である。特に重要な数人は特別な名前で呼ばれている。
;「哲学者」と呼ばれる[[アリストテレス]] : 史上最高の哲学者であると考えられていた。スコラ学者たちはアリストテレスの手法を用いて神学を再構成しようとした。
;「教師」と呼ばれる[[ペトルス・ロンバルドゥス]] : 彼のあらわした『注解[[命題 (ペトルス・ロンバルドゥス)|命題集]]』は当時の大学において最もよく用いられていたテキストであった。これは教父たちの著述を注解したものである。
;[[アウグスティヌス]] : トマス・アクィナスは彼を最高の神学者であると考えており、著述でもしばしば引用している。
;[[偽ディオニシウス・アレオパギタ]] : 『使徒行伝』にあらわれるディオニシオスの名を借りて著述をおこなった5世紀のシリアの修道者の著作もトマスはよく引用している。
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== 日本語訳 ==
*『神學大全』 [[高田三郎 (哲学者)|高田三郎]]・[[山田晶]]・[[稲垣良典]]ほか訳 <ref>最初期の訳書に資本利子及企業利得論』抜萃神学大全』 ・1913年<br> Augustae Taurinarum版、高畠素之・安倍浩訳、而立社「經濟學說體系3」、大正12年</ref> [[創文社]](全45巻・全39冊、1960年~2012年<brref> ※2008年以降は全45ごと表記だが、後期刊の第3部に「連番」となった巻での出版があり、総数は全39る(5刊であった。分)</ref>、1960年~2012年
*:[[講談社]]「創文社オンデマンド叢書」<ref>2020年に創文社が会社解散したため。上製・全39冊組も出版</ref>、[[オンデマンド印刷|オンデマンド版]]および[[電子書籍]]([[Amazon Kindle|Kindle版]]ほか、2022年)に移行。
*[[山田晶]]訳・解説 『トマス・アクィナス』 〈続世界の名著5/新版中公バックス・同20〉[[中央公論社]]<br> ※第一部26章までが訳されている。
*『トマス・アクィナス 神学大全 Ⅰ・Ⅱ』 [[山田晶]]訳、[[中公クラシックス]]([[川添信介]]補訳・解説)、2014年
*:※第一部・第26章までを訳出(創文社版でも第1・2巻目)
**元版は、山田晶責任編集〈続 [[世界の名著]]5〉[[中央公論新社|中央公論社]]、1975年<ref>他に旧訳版は『世界大思想全集 第2期・28巻 トマス・アクィナス 神学大全』[[服部英次郎]]編訳、[[河出書房新社]]、1965年</ref>、普及版・中公バックス「世界の名著20」
*『精選 神学大全』 稲垣良典編訳、[[山本芳久 (哲学者)|山本芳久]]編訳・解説([[岩波文庫]] 全4巻)
*:「1 徳論」、「2 法論」、2023 - 2024年。後半2巻は、山本芳久編訳で『神学大全』全体から重要な箇所を抜粋訳(未刊)。
 
== 脚注 ==
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== 参考文献 ==
*[[稲垣良典]]『トマス・アクィナス』 [[講談社学術文庫]]、1999<br>初
*:元版『トマス・アクィナス 人類の知的遺産 20 [[講談社]]、1979
 
== 推薦関連文献 ==
*稲垣良典  『トマス・アクィナス「神学大全」』  講談社選書メチエ、2009年/[[講談社学術文庫]]、2019年※
*稲垣良典  『トマス=アクィナス 人と思想』 (新書版: [[清水書院]]1992年、新装版2016年※。新書版
*稲垣良典  『トマス・アクィナス』 <思想学説全書>( [[勁草書房]]) 〈思想学説全書〉、新版1996年
*稲垣良典  『トマス・アクィナス哲学の研究』  [[創文社]]、新版2000年/創文社オンデマンド叢書、2022年※
:;※は電子版も刊行
 
==関連項目==
*[[スコラ学]]
*[[中世哲学]]
*[[神学者の一覧]]
 
== 外部リンク ==
{{wikisourcelang|la|Summa Theologiae}}
{{wikisourcelangwikisource|en:Summa Theologiae|Summa Theologiae|3=英語訳}}
{{wikisource|ja:神学大全|神学大全|3=日本語訳}}
 
*[http://www.corpusthomisticum.org/sth0000.html トマス・アクィナス『神学大全』(原文)] - [http://www.corpusthomisticum.org/ CORPUS THOMISTICUM]
*[http://www.gutenberg.org/browse/authors/t#a7489 トマス・アクィナス『神学大全』(英訳)] - [http://www.gutenberg.org/wiki/Main_Page Project Gutenberg]
*[https://aquinas.cc/la/en/~ST.I トマス・アクィナス『神学大全』(レオニナ版) 羅英対訳] - [https://www.aquinasinstitute.org Aquinas Institute]}
 
{{Normdaten}}
[[category:キリスト教神学|しんかくたいせん]]
[[category{{DEFAULTSORT:中世哲学|しんかくたいせん]]}}
[[Category:キリスト教神]]
[[Category:中世哲学の文献]]
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[[Category:トマス・アクィナス]]