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{{Otheruses|日本における制度|総論|公的扶助}}
{{Law}}
'''生活保護'''(せいかつほご、{{lang-en-short|Public Assistance}}<ref>{{Cite web|和書|title=日本法令外国語訳データベースシステム - 生活保護法 |publisher=[[法務省]] |url=http://www.japaneselawtranslation.go.jp/law/detail_main?vm=&id=24 |accessdate=2014-08-01}}</ref>)は、[[国家|国]]や[[地方公共団体|自治体]]が資産や能力等すべてを活用してもなお「[[健康]]で[[文化]]的な最低限度の[[生活]]」を出来ない日本国民に、これを保障し、自立の助長を目的に設けている[[公的扶助]]制度<ref name=":11">[https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/seikatuhogo/index.html 生活保護制度] - [[厚生労働省]]</ref><ref>{{PDFlink|[https://www.mhlw.go.jp/english/wp/wp-hw5/dl/23010809e.pdf Outline of the Public Assistance System - Ministry of Health, Labour and Welfare]}}</ref><ref name=":10" />。[[日本国憲法第25条]]や[[生活保護法]]の理念に基づき、生活に困窮する[[日本国籍]]を有する国民(日本人)に対して、資力調査([[ミーンズテスト]])を行いその困窮の程度によって、要保護者に必要な扶助を行い、最低限度の生活([[ナショナル・ミニマム]])を保障するとともに、[[自立]]を促すことを目的とする<ref name=":10">[https://www.mhlw.go.jp/bunya/seikatsuhogo/seikatuhogo.html 生活保護と福祉一般] - [[厚生労働省]]</ref>。
 
[[日本国憲法第25条]]や[[生活保護法]]の理念に基づき、生活に困窮する[[日本国籍]]を有する国民(日本人)に対して、資力調査([[ミーンズテスト]])を行いその困窮の程度によって、要保護者に必要な扶助を行い、最低限度の生活([[ナショナル・ミニマム]])を保障するとともに、[[自立]]を促すことを目的とする<ref name=":10">[https://www.mhlw.go.jp/bunya/seikatsuhogo/seikatuhogo.html 生活保護と福祉一般] - [[厚生労働省]]</ref>。[[厚生労働省]]は、「資産や能力等すべてを活用してもなお生活に困窮する方」に、「困窮の程度に応じて必要な保護を行う」とし<ref name=":11" />、「生活保護を必要とする可能性」のある人の申請行為は「国民の権利」としながらも<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/seikatsuhogopage.html |title=生活保護を申請したい方へ |publisher=厚生労働省 |date= |accessdate=2022-06-19}}</ref>、[[2012年]](平成24年)からは、[[生活保護不正受給|不正受給]]への厳格な対処、一人当たりの[[生活扶助]]<ref group="注釈">食費、被服費、光熱費などが支給される制度</ref>や[[医療扶助]](無償医療)等の給付水準適正化、生活保護受給世帯における[[就労]]促進、就労困難者への生活保護以外の別途支援制度の構築、「正当な理由なく[[就労]]しない者」へは厳格対処をするための社会保障改革推進法が成立した<ref>{{Cite web |url=https://elawslaws.e-gov.go.jp/document?lawid=424AC1000000064 |title=平成二十四年法律第六十四号 社会保障制度改革推進法 |access-date=2023年12月22日}}</ref>。
 
== 原則・権利・義務 ==
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#*主たる生計維持者ではない非稼働者(いわゆる[[専業主婦]]・[[主夫]]等)
#*[[未成年者|18歳未満の児童]]
#*おおむね70歳以上の[[高齢者]]<br />など
# 要保護者の生活歴等から特別な事情があり明らかに扶養ができない(以下、具体例)。
#*当該扶養義務者に[[借金]]を重ねている。
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#*[[虐待]]等の経緯がある者
 
以上の条件に該当してると判断された場合、生活保持義務関係者([[夫婦]]及び[[中学校|中学]]3年以下の子に対する親)以外に対する照会は不要となり、生活保持義務関係者に対しては、関係機関等<ref group="注釈">税務部局(町村)、[[社会保険事務所]]、[[公共職業安定所]]、[[労働基準監督署]]、[[運輸支局]]、[[金融機関]]・[[保険会社]]、雇用主等</ref><ref>{{Cite report|author=厚生労働省社会・援護局|authorlink=社会・援護局|date=2003-03-31|title=生活保護制度における福祉事務所と民生委員等の関係機関との連携の在り方について|url=https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta8834&dataType=1&pageNo=1|accessdate=2022-04-30}}</ref>に対する照会のみとなる。
 
== 種類 ==
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:この点について政府は医療扶助の抑制策として生活保護受給者に対して医師の判断を条件に後発医薬品の処方を原則とするよう生活保護法を改正し、2018年10月からの施行された。これについては「生活保護受給者が医薬品を自由に選択できなくなる」との批判もある<ref name="asahi1802">{{Cite news|author=佐藤啓介|title=生活困窮者へ支援策、閣議決定 医療扶助では抑制策も|newspaper=[[朝日新聞デジタル]]|date=2018-02-09|url=https://www.asahi.com/articles/ASL28416ZL28UTFK004.html|accessdate=2018-02-17}}</ref>。医療扶助は生活保護費の半分を占め、うち医科の入院医療費が全体の55.7%(2013年)と大きく、医療扶助による入院患者は、1か月平均の42.9%が精神障害であり多数となっている。人数では7.1%入院患者に、医療扶助費全体の55%余が使われている。日本は、世界でも突出して精神科のベッド数、入院患者数が多い国であり、長期入院が生活保護費を上昇させている([[社会的入院]])<ref>{{Cite news|author=原昌平|title=貧困と生活保護(30) 医療扶助の最大の課題は、精神科の長期入院|newspaper=[[読売新聞]]|date=2016-04-29|url=https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20160428-OYTET50014/1/|accessdate=2019-02-28}}</ref>。病院通院のタクシー代も一時医療扶助として支給され年間で45億円の給付があったが、主要都市間で受給者の上限額([[長崎市]]242円、[[奈良市]]12,149円)に差異がある<ref name="satsuki">福祉依存のインモラル 片山さつき オークラNEXT新書 2012年12月出版</ref>。
; [[生活扶助]]
: 被保護者が、衣食、その他日常生活の需要を満たすための扶助であり、飲食物費、光熱水費、移送費などが支給される。基準生活費(第1類・第2類)と各種加算とに分けられている。第1類は個人ごとの飲食や衣服・娯楽費等の費用、第2類は世帯として消費する光熱費等とされており、各種加算は[[障害者加算]](重度障害者加算、重度障害者家族介護料、在宅重度障害者介護料)や母子加算、妊産婦加算、介護施設入所者加算、在宅患者加算、放射線障害者加算、児童養育加算、介護保険料加算があり、特別需要に対応するもの等<ref>{{PDFlink|[https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001d2yo-att/2r9852000001d31w.pdf 厚生労働省社会・援護局保護課 第2回社会保障審議会生活保護基準部会「3 各種加算の概要について」平成23年5月24日]}}</ref>である。改定は現在、水準均衡方式によっている<ref name="#1">{{PDFlink|[https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001d2yo-att/2r9852000001d31w.pdf 厚生労働省社会・援護局保護課 第2回社会保障審議会生活保護基準部会「生活扶助基準改定率等の年次推移」平成23年5月24日]}}</ref>。
; [[教育扶助]]
: 被保護家庭の児童が、[[義務教育]]を受けるのに必要な扶助であり、教育費の需要の実態に応じ、原則として金銭をもって支給される。
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=== 最高裁の判断 ===
国内での永住権を持つ外国人が、日本人と同じように生活保護法の対象となるかどうかが争われた訴訟で、最高裁第二小法廷は2014年7月18日、二審<ref>福岡高等裁判所 平成22年(行コ)第38号 平成23年11月15日 判決</ref>の判決を破棄し、「現行の生活保護法は,1条及び2条において(中略)「国民」とは日本国民を意味するものであって」「生活保護法が一定の範囲の外国人に適用され又は準用されると解すべき根拠は見当たらない。」「生活保護法が一定の範囲の外国人に適用され又は準用されるものとなると解する余地はなく」「外国人は,行政庁の通達等に基づく行政措置により事実上の保護の対象となり得るにとどまり,生活保護法に基づく保護の対象となるものではなく,同法に基づく受給権を有しないというべきである」とする判断を示している<ref name="saikosai20140718">最高裁判所第二小法廷 平成24年(行ヒ)第45号 平成26年7月18日 判決 破棄自判 {{Cite web|和書|url=http://www.shoumudatabase.moj.go.jp/search/html/upfile/geppou/pdfs/d06102/g06102003.pdf |title=3 生活保護開始決定義務付け等請求上告事件 |format=PDF |publisher=訟務月報61巻2号 |accessdate=2022-02-06|archiveurl=https://web.archive.org/web/20181007112010/http://www.shoumudatabase.moj.go.jp/search/html/upfile/geppou/pdfs/d06102/g06102003.pdf |archivedate=2018-10-07 |deadlinkdateurl-status=dead|url-status-date=2022年2月-02}}</ref>。
 
 
=== 大阪市での中国人生活保護集団申請 ===
[[2010年]]5月、[[大阪市]]で中国国籍者が集団(10世帯で25名、その後合計46名)で入国し、外国人登録が認められた直後に生活保護申請を集団で行うという事例が発生。大阪市は形式的に要件が整っている以上、保護決定をせざるを得ない状況にあると考えられたことから、'''生活保護支給決定'''を行った。大阪市は、以下の「基本的認識」の通り、入国管理法の運用や生活保護制度の準用に問題があるとの認識から、入国管理局他、関係先に対して申し入れ等を行うとともに、同様の生活保護の申請は受付を保留し、厳正な対応を行っていくことを決め、この事実を2011年6月29日に公表し、問題提起を行った。最終的に、「身元保証人による保証の実態実質的担保を明らかに提出していいため、生活保護受給を目的とした入国と判断せざるを得ない」を理由にとし、'''生活保護打ち切り'''を最終決定している<ref name=":3">{{Cite web|title=在日中国人の生活保護依存、外国籍で最低 厚労省発表--人民網日本語版--人民日報|url=http://j.people.com.cn/94473/8265843.html|website=j.people.com.cn|accessdate=2021-11-10}}</ref><ref name="osaka">{{Cite web|和書|url=https://www.city.osaka.lg.jp/fukushi/page/0000086531.html|title=大阪市 - 中国国籍の方の生活保護集団申請について|accessdate=2020-4-13}}</ref>。
 
:基本的認識(大阪市)
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厚生労働省においても、上記調査結果は被保護世帯数の割合(保護世帯比)であるとして「生活保護は申請に基づいた制度であることから、調査から得られた「保護世帯比」が、申請の意思がありながら生活保護の受給から漏れている要保護世帯(いわゆる漏給)の割合を表すものではない」としている<ref>{{Cite web|和書|author=厚生労働省社会・援護局保護課|authorlink=社会・援護局|date=2010-04-09|url=https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000005olm-img/2r98520000005oof.pdf|title=生活保護基準未満の低所得世帯数の推計について|format=PDF|publisher=[[厚生労働省]]|accessdate=2011-03-10}}</ref>。「捕捉率」という言葉は使用する者もいるが、公的機関では統計資料含め、生活保護受給率と表記している<ref>[https://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/07/s0706-3d.html 生活保護率における地域間格差の原因分析のための調査 平成17年7月 全国市長会]</ref>
 
生活保護には所得要件だけでなく資産要件があるため、所得が生活保護支給基準以下となっても、葬祭費の備えなどの預貯金や保険等が最低生活費の半月分以上ある場合は、生活保護の要件を満たさない。生活保護要件水準の者の生活保護受給率(生活保護補足率)は、調査によると、フランスでは91.6%、ドイツでは64.6%、イギリスでは47-90%、日本は15.3-18%となっている<ref>尾藤廣喜、吉永純、小久保哲郎「生活保護「改革」ここが焦点だ!」(あけび書房、2011年)</ref>。ただし、このような数値になる背景には諸外国公的扶助制度と比較した場合に日本は、[[フランス]]と比較するならば約2倍もの金額の所得保障をしていることにある<ref name="#3">{{PDFlink|[https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001h27t-att/2r9852000001h29x.pdf 第3回社会保障審議会生活保護基準部会「資料1:第2回部会等における委員の依頼資料」厚生労働省社会・援護局保護課 2012年6月28日]}}</ref>。さらに、他国の類似制度は下記のように受給資格や審査、受給後の管理も厳格で、自立を促す仕組みになっている。親類への扶養義務者への資産調査、受給申請者の納税記録、財産売却・居住義務、ボランティア含む労働義務が日本では課されていない。日本の生活保護は被生活保護者が医療費無償であるために、彼らの医療費がそもそもの支給額とほぼ同額で累計支給額が2倍となっている。また、[[頻回受診]]等の問題を招くことがある。日本の生活保護支給は指定住居への移住義務があるドイツの一人あたりの約3倍から5倍ほどであり、家は放棄する必要もなく、労働義務も事後の綿密な不正調査となく、他の先進国よりも一度受給すると自立を促さない仕組みになっている<ref>「ヨーロッパから民主主義が消える: 難民・テロ・甦る国境」p32.川口マーン惠美、2015年</ref>。
 
生活保護受給率の全国平均自体は1.64%であるが自治体で開きがある。2019年時点で人口に占める被生活保護者率の政令市及び中核市では、1位の大阪市は約4.98%、2位函館市は約4.58%、3位那覇市は約4.08%となっている<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450312&tstat=000001150607&cycle=8&tclass1=000001150608&tclass2val=0 |title=被保護実人員及び保護率(人口千対),都道府県-指定都市-中核市×月・1か月平均別 |access-date=2022年9月8日}}</ref>。