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シトクロムb→シトクロム
 
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|属 = '''ヤマネ属''' {{snamei|Glirulus}}
|種='''ヤマネ''' {{snamei|G. japonicus}}
|学名 = ''Glirulus japonicus'' ([[w:Heinrich Rudolf Schinz|Schinz]], [[1845年|1845]])<ref name="ishii">[[石井信夫]] 「ヤマネ」『日本の哺乳類【改訂2版】』阿部永監修([[東海大学出版会]]、2008年、145)145</ref>
|和名 = ヤマネ<ref name="ishii" /><ref>[[川田伸一郎]], 岩佐真宏, 福井大, 新宅勇太, 天野雅男, 下稲葉さやか, 樽創, 姉崎智子, [[横畑泰志]] 「[https://doi.org/10.11238/mammalianscience.58.S1 世界哺乳類標準和名目録]」『哺乳類科学』58巻 別冊[[日本哺乳類学会]]、2018年、1)1-53頁</ref>
|英名 = [[:en:Japanese dormouse|Japanese dormouse]]<ref name="ishii" />
}}
 
'''ヤマネ'''(山鼠、冬眠鼠<ref>{{Citation|和書|year=2008|contribution=やまね(山鼠・冬眠鼠)|editor=新村出|editor-link=新村出|title=[[広辞苑]]|edition=第6|publisher=[[岩波書店]]}}</ref>、[[学名]]: {{snamei|Glirulus japonicus}})は、[[哺乳綱]][[齧歯目]][[リス亜目]][[ヤマネ科ヤマネ属]]に分類される[[齧歯類]]。現生[[ (分類学)|種]]では本種のみでヤマネ[[ (分類学)|属]]を構成する。[[日本]][[固有種]]<ref name="iucn" /><ref name="ishii" /><ref name="endo" /><ref name="fn3">加藤陸奥雄、沼田眞、渡辺景隆、[[畑正憲]]監修 『日本の天然記念物』([[講談社]]、[[1995年]])627頁</ref>で、別名'''ニホンヤマネ'''<ref name="endo">[[遠藤秀紀]] 「ニホンヤマネ」『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ1 ユーラシア、北アメリカ』小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著講談社、2000年、175)175</ref><ref name="minato">[[湊秋作]] 「ニホンヤマネの生態」『動物大百科 5 小型草食獣』[[今泉吉典]]監修 D.W.マクドナルド編([[平凡社]]、1986年、96)96-97頁</ref>。[[種小名]] {{snamei|japonicus}} は「日本の」を意味する
 
== 分布 ==
[[日本列島]]のうち[[本州]]、[[四国]]、[[九州]]、[[隠岐諸]][[固有種島後]]に棲息する<ref name="iucn" /><ref name="ishii" /><ref name="endo" /><ref name="fn3"/>加藤陸奥雄、沼田眞、渡辺景隆、畑正憲監修。インターネットを用いた近年(1995 『日- 2011年)の分布調査では州、四国、九州天然記念物』各都府県で確認・撮影例があったが、[[講談社大阪府]]、[[1995年岡山県]]、627[[香川県]]、[[千葉県]]では確認例はなかった<ref>杉山昌典,門脇正史 「[https://doi.org/10.11238/mammalianscience.54.269 インターネットを活用したヤマネ''Glirulus japonicus''の全国分布調査]」『哺乳類科学』54巻 2号(日本哺乳類学会、2014年)269-277</ref>
 
種小名 {{snamei|japonicus}} は「日本の」の意。インターネットを用いた近年(1995 - 2011年)の分布調査では本州・四国・九州の各都府県で確認・撮影例があったが、大阪府・岡山県・香川県・千葉県では確認例はなかった<ref>杉山昌典,門脇正史 「[https://doi.org/10.11238/mammalianscience.54.269 インターネットを活用したヤマネ''Glirulus japonicus''の全国分布調査]」『哺乳類科学』54巻 2号、日本哺乳類学会、2014年、269-277頁。</ref>。
 
== 形態 ==
頭胴長([[体長]])6.8 - 8.4センチメートル<ref name="ishii" /><ref name="endo" />。尾長4.4 - 5.4センチメートル<ref name="ishii" /><ref name="endo" />。[[体重]]は夏季には14 - 20グラムだが、冬眠前には34 - 40グラムに達する個体もいる<ref name="ishii" />。尾には約2センチメートルの体毛が房状に伸長する<ref name="ishii" />。背面は淡褐色で<ref name="ishii" />、腹面の毛衣は白がかった褐色<ref name="endo" />。背面には暗褐色の縦縞が入る<ref name="ishii" /><ref name="endo" />。眼の周囲は暗褐色<ref name="ishii" />。指一本で木にぶら下がることができる強力なかぎ爪を持っている<ref name="名前なし-20240629110927">『動物園を100倍楽しむ!飼育員が教えるどうぶつのディープな話』、2023年7月10日発行、大渕希郷、緑書房、P106。</ref>。盲腸がない<ref>『動物園を100倍楽しむ!飼育員が教えるどうぶつのディープな話』、2023年7月10日発行、大渕希郷、緑書房、P107。</ref>。
 
[[交尾]]栓をつ。
 
== 分類 ==
同属とされる最古の[[化石種]]ドイツの5000万年前の地層から<ref name="名前なし_2-20240629110927">『動物園を100倍楽しむ!飼育員が教えるどうぶつのディープな話』、2023年7月10日発行、大渕希郷、緑書房、P105。</ref>以降も[[ヨーロッパ]]3,000,000300万年前の地層から発見されている<ref name="minato" />。2007年に発表されたヤマネ科の核[[デオキシリボ核酸|DNA]]の3[[遺伝子座]][[分子系統]]推定では、本属と[[オオヤマネ]]属は25,000,0002500万年前に分岐したという解析結果が得られている<ref>Mitsuo Nunome, Shumpei P. Yasuda, Jun J. Sato, Peter Vogel, Hitoshi Suzuki, "[https://doi.org/10.1111/j.1463-6409.2007.00296.x Phylogenetic relationships and divergence times among dormice (Rodentia, Gliridae) based on three nuclear genes]," ''Zoologica Scripta'', Volume36, Issue 6, 2007, Pages 537-546.</ref>。
 
日本が[[ユーラシア大陸]]と地続きで温暖な時代に侵入した[[遺存種]]と考えられている<ref name="fn3"/>。少なくとも約510万年前には生息していたと考えられ<ref name="名前なし_2-20240629110927"/>、[[山口県]]にある500,00050万年前の地層から、本種の化石が発見されている<ref name="minato" />。2012年に発表された61体の[[標本]]を用いた[[ミトコンドリアDNA]][[シトクロムb]]および[[Y染色体]]上の[[SRY]]遺伝子の分子系統推定では、大きく[[東北地方]][[青森県]]から[[福島県]]関東(福島県から[[関東地方]][[静岡県]]、[[紀州]][[岐阜県]][[和歌山県]]、[[山陰]][[兵庫県]][[福井県]]四国九州([[島根県]][[広島県]][[山口県]]および九州)、[[赤石山脈|赤石]][[長野県]][[飯田市]]および静岡県[[静岡市]]、[[白山]]、隠岐の9つの[[個体群]]に分かれるという解析結果が得られた(ただし[[石川県]]白山産と島根県隠岐の島産の標本はそれぞれ1体ずつしかなく、SRY遺伝子の解析では紀州と山陰は同じ系統という解析結果が得られている)<ref name="yasuda_et_al">Shumpei P. Yasuda, Manami Iwabuchi, Haruka , Shusaku Minato, Kunihiro Mitsuishi, Kimiyuki Tsuchiya, & Hitoshi Suzuki, "[https://doi.org/10.2108/zsj.29.111 Spatial Framework of Nine Distinct Local Populations of the Japanese Dormouse ''Glirulus japonicus'' Based on Matrilineal Cytochrome b and Patrilineal SRY Gene Sequences]," ''Zoological Science'', Volume 29, Number 2, [[日本動物学会|Zoological Society of Japan]], 2012, Pages 112-120.</ref>。
 
集団ごとに食性や体色、[[冬眠期間、]]や繁殖期間、出産回数などが異なっており、ほかの種類では別種となってもおかしくないとの指摘もある<ref>{{Cite book |和書 |author= 湊秋作 |year=2018 |title=ニホンヤマネ |page=29|publisher=[[東京大学出版会]]}}</ref>。
 
== 生態 ==
低山地から亜高山にかけての[[森林]]に生息する<ref name="ishii" />。樹上棲で<ref name="iucn" />、細い枝はぶらさがりながら移動する<ref name="minato" />。枝の間を跳躍したり、後肢だけで樹上にぶら下がることもある<ref name="minato" />。[[夜行性]]<ref name="iucn" /><ref name="ishii" /><ref name="endo" />。[[浅間山]]麓個体群ではオス2[[ヘクタール]]、メス1ヘクタール弱の行動圏内で生活するという報告例がある<ref name="ishii" />。[[樹洞]]に[[コケ]][[樹皮]]を集めた巣を作るが<ref name="ishii" />、岩壁や岩の割れ目、[[スズメバチ]]類の古巣後述するように[[山小屋]]や巣箱に巣をつくることもある<ref name="minato" />。決まった巣を持たない<ref name="名前なし-20240629110927"/>。尾を強く掴むとその周辺の体毛と皮膚が抜け落ちて骨だけが残り、外敵から襲われた時に役立つと考えられている<ref name="minato" />。平均気温が9℃以下まで下が尾は一度抜けると、樹洞や腐った木の樹皮の隙間・地中・落ち葉の下などで冬眠する<ref name="minato" />。例二度生え浅間山麓や[[三つ峠|三ツ峠山]]では10月から翌4月、和歌山では11月から翌2月に冬眠する<ref name="minato" />。複数個体が集まって冬眠するとが多い<ref name="minato" />。冬眠中は食事を取らず秋季まで蓄えた体内の脂肪を消費し、外気温にあわせて低体温を維持(0℃以下に下がることは名前い)呼吸数や心拍数も低下させる<ref name=-20240629110927"minato" />。
 
平均気温が9[[セルシウス度|℃]]以下まで下がると、樹洞や腐った木の樹皮の隙間、地中、落ち葉の下などで冬眠する<ref name="minato" />。例として浅間山麓や[[三つ峠|三ツ峠山]]では10月から翌4月、和歌山県では11月から翌2月に冬眠する<ref name="minato" />。複数個体が集まって冬眠することが多い<ref name="minato" />。冬眠中は食事を取らず秋季まで蓄えた体内の脂肪を消費し、外気温にあわせて低体温を維持(0℃以下に下がることはない)し、呼吸数や心拍数も低下させる<ref name="minato" />。冬眠中の心拍数は一分間に50-60回。冬眠中でも、筋肉や血液がガチガチに凍る前に危険を知らせるスイッチのようなものがある。
食性は雑食で、主に[[ヤママユ]]などの鱗翅類・セミ類・トンボ類・[[カナブン]]・ニセノコギリカミキリなどの[[昆虫]]を食べ、クモも食べる<ref name="minato" />。[[果実]]、鳥類の卵なども食べる<ref name="iucn" /><ref name="ishii" />。果実は[[アケビ]]・[[サルナシ]]・[[ヤマブドウ]]などを食べる<ref name="minato" />。果実は皮を残して、中身だけを食べる<ref name="minato" />。
 
[[雑食性|食性は雑食]]で、主に[[ヤママユ]]などの[[鱗翅類]]、[[セミ]]、[[トンボ]][[カナブン]]ニセノコギリカミキリなどの[[昆虫]]を食べ、クモも食べる<ref name="minato" />。[[果実]]、鳥類の卵なども食べる<ref name="iucn" /><ref name="ishii" />。果実は[[アケビ]][[サルナシ]][[ヤマブドウ]]などを食べる<ref name="minato" />。果実は皮を残して、中身だけを食べる<ref name="minato" />。繊維質の多い食品やクルミのような固い食品は苦手である<ref name="名前なし-20240629110927"/>。
繁殖様式は胎生。飼育下では冬眠が明けて2週間後に交尾した観察例がある<ref name="minato" />。妊娠期間は平均33日<ref name="minato" />。1回に主に3 - 5頭、最大7頭の幼獣を産む<ref name="ishii" />。生後10 - 15日で開眼し、生後20日で自分で食物を食べるようになる<ref name="minato" />。寿命は3年で、飼育下では8年<ref name="ishii" />。
 
繁殖様式は[[胎生]]。飼育下では冬眠が明けて2週間後に交尾した観察例がある<ref name="minato" />。妊娠期間は平均33日<ref name="minato" />。1回に主に3 - 5頭、最大7頭の幼獣を産む<ref name="ishii" />。生後10 - 15日で開眼し、生後20日で自分で食物を食べるようになる<ref name="minato" />。寿命は3年で、飼育下では8年<ref name="ishii" />。オスは子育てをせず、繁殖の子育てをする時のみ、メスが苔や木の皮を編み込んだ巣を構える<ref>『動物園を100倍楽しむ!飼育員が教えるどうぶつのディープな話』、2023年7月10日発行、大渕希郷、緑書房、P106~107。</ref>。
 
冬眠中の心拍数は一分間に50-60回。
冬眠中でも、筋肉や血液がガチガチに凍る前に危険を知らせるスイッチのようなものがある。
 
== 人間との関係 ==
丸まって冬眠する様子からマリネズミ、コオリネズミの俗称もある<ref name="endo" /><ref name="minato" /><!-- endoマリネズミのみ -->。
 
山小屋や巣箱に営巣することもあり、山小屋にある[[布団]][[箪笥|タンス]]の中で冬眠することもある<ref name="minato" />。冬に木を切ると、冬眠中のヤマネが転がり出てくることがあることから、[[林業]]に携わる人々は、ヤマネを山の守り神として大切にしてきた。
 
日本では[[1975年]]に国の[[天然記念物]]に指定されている<ref name="ishii" />。
 
=== アニマルパスウェイやヤマネブリッジによる保護活動 ===
ヤマネを含めた野生動物が、森林を分断して通る道路を渡ろうとして自動車により[[轢死]](ロードキル)することがあり、被害を減らす対策が行なわれている。[[八ヶ岳]]山麓では、路面に出ず道路を上方で渡れるようにとヤマネブリッジやアニマルパスウェイが架けられているほか、森林を分断しないよう[[切土]]工法から変更された「ヤマネといきものトンネル」が1997年に建設された<ref>[https://www.yamane-ikimono.org/news/2022/%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E7%9A%84%E3%81%AA%E9%9C%8A%E9%95%B7%E9%A1%9E%E5%AD%A6%E8%AA%8C%E3%81%AB%E8%AB%96%E6%96%87%E3%81%8C%E6%8E%B2%E8%BC%89%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F/ 【Folia Primatologica】に日本の樹上性動物のための歩道橋の総括が掲載されました] 一般社団法人ヤマネ・いきもの研究所(2022年10月13日)2023年9月3日閲覧</ref>。
 
== 画像 ==
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{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist|30em}}
 
* 中島福男 『日本のヤマネ[改訂版]』 (2006年3月1日刊行、信濃毎日新聞社)ISBN 9784784070176
=== 参考文献 ===
* 湊秋作 『ヤマネって知ってる?-ヤマネおもしろ観察記』 (2000年10月刊行、築地書館)ISBN 9784806712138
* 中島福男 『日本のヤマネ[改訂版] (2006年3月1日刊行、[[信濃毎日新聞社]])ISBN 9784784070176
* 小宮輝之 『日本の哺乳類』 学習研究社<フィールドベスト図鑑>、2002年、P79
* 湊秋作 『ヤマネって知ってる?-ヤマネおもしろ観察記』 (2000年10月刊行、[[築地書館]])ISBN 9784806712138
* 小宮輝之 『日本の哺乳類』 [[学習研究社]]<フィールドベスト図鑑>、2002年、P79p.79
 
== 関連項目 ==
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{{Wikispecies|Glirulus japonicus}}
 
{{Taxonbar|from=Q1422952}}
{{デフォルトソート:やまね}}
[[Category:齧歯目ヤマネ科]]
[[Category:哺乳類天然記念物]]
[[Category:地域を定めずに指定された天然記念物]]