「投与経路」の版間の差分

'''投与経路'''（とうよけいろ）とは[[薬理学]]や[[毒性学]]において[[薬物]]、[[毒物]]その他の化合物を体内に送り込むための方法と経路を指す<ref>{{Efn|毒性学においては「暴露」の方がより適切な用語であるが、意図的に与える場合は「投与」が用いられうる。</ref>}}。与えられた物質は、体内に導入された場所からその機能が発現する特定の部位へと輸送されなければならない（このことは、たとえ[[角質|角質層]]を通した皮膚内部への単なる浸潤だったとしても言えることである）。しかしながら生体の輸送機構を用いて薬物を輸送することはそれほど単純なことではない。吸収、[[分配布容積|分布]]、[[代謝]]、[[排出泄]] ([[ADME]]) のプロセスに関連する薬物の[[薬物動態学|薬物動態学的性質]]は投与経路に大きく影響をうける。

投与経路はおおよそ以下のように分類される<ref>{{Efn|[[アメリカ食品医薬品局]]は111の異なる投与経路を定義している。[httproutes of administration. （https://www.fda.gov/cder/dsm/DRG/drg00301.htm、リンク切れ） routes of administration]. よって本項目上のリストは全ての投与経路を網羅しているわけではない。}}。

;# 非経口投与:直接作用が期待 消化器系以外の経路で吸収される部位方法。全身に与えられる。局所的な効果をもたらす。

===経腸; 膣内投与===

;== 非経動脈口投与 (IA)==

;心臓内==== 経静脈投与 (ICIV) ====

=== その他の非経口投与 ===

:肺からの吸収を意図した投与方法<ref>{{Efn|局所投与の項で挙げた吸入投与とは目的が異なる。局所投与では薬物の気道、肺そのものに対する作用が期待されるが、非経口投与では肺を通して吸収された薬物が血液循環系に入って全身に作用することを期待している。</ref>}}。例）[[吸入麻酔薬]]。

===その他の= 気管内投与経路 ====

*血中濃度の立ち上がりは急激であるため即時の効果が見られるが、[[薬物乱用]]においては中毒になるリスクがより高い。

*注射針を再使用すると[[ヒト免疫不全ウイルス|HIV]]や[[肝炎]]などの感染症の危険性を伴う。

*生体の自然な防御機構の多くを通過しないため、被験者を[[肝炎]]、[[膿瘍]]、[[感染症]]、不溶性粒子、添加剤、[[不純物]]などに直接さらすことになり、最も危険な投与経路である。

*器具を厳密に[[無菌状態]]にする必要がある。

*経静脈投与は血管が細い小動物には適さない。そのため[[動物実験]]では[[経管栄養]]が好まれる。

状況に応じて同じ投与経路が局所投与にも非局所投与にも用いられる。例えば、吸入投与は[[喘息|喘息薬]]の投与においては[[気道]]を標的器官としている（局所投与）が、[[全身麻酔]]の投与においては[[脳]]が標的器官である（非局所的投与）。一方、同一の薬物が投与経路により異なった結果をもたらすことがある。例えば、モルヒネのような[[鎮静剤オピオイド]]の[[受容体拮抗薬|拮抗薬]]として知られる[[ナロキソン]]は、消化管からは十分に血流に吸収されないという特性から、経腸投与と非経口投与では用途が異なる。静脈投与ではナロキソンは血流に乗って[[中枢神経]]に輸送され、そこで鎮静剤オピオイドと反対の作用を示す。そのため鎮静剤の[[オピオイド過剰摂取]]治療薬として用いられる。一方、経口投与ではナロキソンは吸収されずに腸管まで達し、そこで[[下剤]]として作用する。そのため鎮痛剤の作用を何ら妨げず、鎮痛療法中の便秘治療に用いられる<ref>{{Cite journal|last=Meissner|first=Winfried|last2=Schmidt|first2=Uta|last3=Hartmann|first3=Michael|last4=Kath|first4=Roland|last5=Reinhart|first5=Konrad|date=2000-01-01|title=Oral naloxone reverses opioid-associated constipation|url=https://journals.lww.com/pain/Abstract/2000/01010/Oral_naloxone_reverses_opioid_associated.13.aspx|journal=PAIN|volume=84|issue=1|pages=105|language=en-US|doi=10.1016/S0304-3959(99)00185-2|issn=0304-3959}}</ref>{{Efn|日本においては[[適応外使用]]である。}}。

<ref>{{cite journal |author=Devillers, G.|title=Exploring a pharmaceutical market niche & trends: nasal spray drug delivery|journal=Drug Delivery Technology|volume=3|issue=3 |pages=48 |year= 2003}}</ref>。経腸投与はその簡便さから慢性病治療薬では頻繁に用いられる。しかしながら、前述のように薬物によっては消化管吸収が悪い（または一定でない）ために経腸投与が適さない場合がある。そのような場合は経皮投与が患者にとって楽な代替経路となりうるが、[[製剤]]の方法が限られているのが経皮投与の難点である。

== 脚注 ==