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[[ファイル:OmegaTowerLiberia-ctr.jpg|thumbサムネイル|250px250ピクセル|[[リベリア]]に残るオメガ塔。高さ426m426[[メートル]]。]]
{{読み仮名|'''オメガ航法'''|オメガこうほう}}は、地上系の[[電波航法]]システムの一つ。かつて[[船舶]]や[[航空機]]で利用されていた。オメガシステムとも呼ばれる。
 
== 概 ==
オメガは[[LORAN|LORAN(ロラン)]]、[[デッカ航法|デッカ]]などと同じく双曲線航法システムの一種である。地球上に配置された送信局からの電波の位相差を計測して送信局からの距離を求めている。2つの送信局からの距離から送信局を焦点とする[[双曲線]]を求め、そこで2つの送信局のいずれかと別の送信局からもうひとつの双曲線を求めた場合、2つの双曲線が交わる点が現在位置であると判明する。
[[ファイル:OmegaTowerLiberia-ctr.jpg|thumb|250px|リベリアに残るオメガ塔。高さ426m]]
オメガは[[LORAN|ロラン]]、[[デッカ航法|デッカ]]などと同じく双曲線航法システムの一種である。地球上に配置された送信局からの電波の位相差を計測して送信局からの距離を求めている。
2つの送信局からの距離から送信局を焦点とする[[双曲線]]を求め、そこで2つの送信局のいずれかと別の送信局からもうひとつの双曲線を求めた場合、2つの双曲線が交わる点が現在位置であると判明する。
 
オメガ航法の最大の特徴は使用周波数が10.2 kHz[[キロヘルツ]]から13.6 kHzキロヘルツまでのいわゆる[[超長波]](VLF) (VLF) を用いており<ref name="{{r|cao">}}電波到達距離が1万[[キロメートル]]と、LORANなど他の双曲線航法とくらべて格段に長い。このためわずか8つの送信局で地球上すべてをカバーでき{{cite webr|cao}}、また双曲線の基線長も長くできるために高い精度が得られる。この8つの送信局を'''オメガ局'''と呼ぶ。
| url = http://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/cosmo/sokuihaihu02/sankosiryo2-2.pdf
| format = PDF
| author = [[総合科学技術会議]] 宇宙開発利用専門調査会 測位分野検討会
| title = 測位技術に関する技術変遷とニーズの変遷の相関(案)
| publisher = [[内閣府]]
| date = 2003-11-27
| accessdate = 2013-8-18
}}</ref>電波到達距離が10000 kmと、[[LORAN]]など他の双曲線航法とくらべて格段に長い。
このためわずか8つの送信局で地球上すべてをカバーでき<ref name="cao"/>、また双曲線の基線長も長くできるために高い精度が得られる。この8つの送信局を'''オメガ局'''と呼ぶ。
 
航空機では、2ヶ所の送信局からの電波の位相差を、オメガ航法装置に内蔵されたコンピュータが連続的に計算を行うことで、現在位置のほかに、航空機で予め設定された地理上の位置であるウエイ・ポイントまでの距離や時間、対地速度、飛行コースからのずれ、風向などの情報を知ることができる。
 
この方式は[[1950年代]]にアメリカ人ジョン・ピアース (John Alvin Pierce) によって提唱され、究極的な電波航法を意味するために[[ギリシア文字]]の最後の一文字 '''[[Ω]]''' を取って '''オメガ電波航法''' (OMEGA radio navigation system) と名付けられた。
 
== 運用の終焉とその後 ==
衛星系の電波航法システムである[[グローバル・ポジショニング・システム|GPS]]の軍用から民間への普及に伴い、[[1997年]][[9月30日]]に全送信局が航法電波送信局としての運用を停止したため<ref name="{{r|対馬オメガ局廃止">{{Cite web/index|url=http: |title=三管区水路通報 第709項 北太平洋北西部 対馬オメガ局廃止|author=海上保安庁 |date=1997 |accessdate=2017-6-18 }}</ref>、現在は利用されていない。その後、米国[[ラムーア郡 (ノースダコタ州)|ノースダコタ州ラムーア郡]]などいくつかの送信局は、電波でも海面下数十m[[メートル]]まで到達可能な[[超長波]] (VLF) の特性に着目し、海中を行動する潜水艦との軍用通信に使用されている。
 
== オメガ局の運用 ==
=== オメガ局一覧 ===
オメガは地球上の8つのオメガ局の任意の組み合わせによって測位を行うシステムであった<ref name="{{r|cao"/>}}。アメリカ合衆国を中心に、西側各国に無線局が配置されていた<ref name="STATUS1975">{{Cite webr|url=https://ntrs.nasa.gov/archive/nasa/casi.ntrs.nasa.gov/19750019113.pdfstatus |title= OMEGA NAVIGATION SYSTEM STATUS AND FUTURE PLANS |author=CDR Thomas P. Nolan et al. |date=1975 |work= |publisher= |accessdate=2017-05-27and plans}}</ref>
{| class="wikitable"
! ステーション !! オメガ局 !! 運用機関<ref{{r|status and plans}} name="STATUS1975"/>!! 運用期間とその後
|-
! !! オメガ局 !! 運用機関<ref name="STATUS1975"/>!!運用期間とその後
|-
! A
! ステーションA
| ブラットランド<br>([[ノルウェー]]、[[ヌールラン県]])
| ||ノルウェー通信局|
| 2002年撤去
|-
! rowspan="2" | ステーションB
| [[トリニダード島]]<br>([[トリニダード・トバゴ]]) |
| style="text-align:center" | ?
| 運用は1976年にペインズヴィルに移行、建物の一部が現存している。
|-
| ペインズヴィル<br>([[リベリア]]、[[モンロビア]])
| ペインズヴィル([[リベリア]]、[[モンロビア]]) ||商業産業交通省||1976年 - 1997年。1997年運用停止。{{ftm|1410|||0|link}}内戦後の2011年5月にアメリカ沿岸警備隊の援助により解体<ref>{{Cite web|url=https://www.uscg.mil/hq/CG9/newsroom/pdf/CG9newsletterMay11.pdf |title=U.S. Coast Guard Helps Liberia Demolish Omega Navigation Tower |author= Linda M. Johnson|date= |work= |publisher=USCG |accessdate=2017-05-27}}</ref>。
| 商業産業交通省
| 1976年 - 1997年。1997年運用停止。1410[[フィート]](約430[[メートル]])。<br>内戦後の2011年5月にアメリカ沿岸警備隊の援助により解体<ref>{{Citation
| author = Linda M. Johnson
| url = https://www.uscg.mil/hq/CG9/newsroom/pdf/CG9newsletterMay11.pdf
| format = [[PDF]]
| archiveurl = https://web.archive.org/web/20170515233051/uscg.mil/hq/CG9/newsroom/pdf/CG9newsletterMay11.pdf
| title = U.S. Coast Guard Helps Liberia Demolish Omega Navigation Tower
| periodical = Delivering the Goods (News from U.S. Coast Guard Acquisition Directorate)
| date = 2011年5月
| accessdate = 2017-5-27
| archivedate = 2017年5月15日 }}</ref>。
|-
! C
! ステーションC
| カネオヘ<br>([[アメリカ合衆国|アメリカ]]、[[ハワイ州]])
| rowspan="2" || アメリカ沿岸警備隊|
| 1987年に施設とそこへの遊歩道が閉鎖されたが、<br>2006年に復旧工事が行われ、現在公開に向け整備中
|-
! D
! ステーションD
| [[ラムーア郡 (ノースダコタ州)|ラムーア郡]]<br>(アメリカ、[[ノースダコタ州]]) ||アメリカ沿岸警備隊|
| 現在米海軍が[[超長波 |VLF]]施設として運用中
|-
! E
! ステーションE
| シャブリエール<br>([[フランス]]、[[レユニオン]]) |
|フランス海軍|| 1976年 - 1999年。1999年解体
|-
! F
! ステーションF
| トレリュー<br>([[アルゼンチン]]、[[チュブ州]]) |
|アルゼンチン海軍|| 1998年解体
|-
! G
! ステーションG
| ウッドサイト<br>([[オーストラリア]]、[[ビクトリア州|ヴィクトリア州]])
| ||運輸省沿岸局|
| オメガ航法の運用停止後、2008年まで他の通信に使われていたが、<br>2015年に解体された。
|-
! H
! ステーションH
| 対馬<br>([[日本]]、[[長崎県]][[上対馬町]]{{読み仮名|舟志|しゅうし}}湾)
| ||海上保安庁|
| 1975年運用開始、19981997年閉局。1999年に解体され、<br>跡地はタワーの一部を保存し公園として整備されている。
|}
 
=== 対馬オメガ局 ===
[[Fileファイル:Tsushima Omega Tower 1977 2.jpg|thumbサムネイル|対馬オメガ局<br>{{国土航空写真}}([[1977年]]度撮影)。]]
{{Main|対馬オメガ局}}
日本は[[長崎県]][[上県郡]][[上対馬町]]大増(現・[[対馬市]]上対馬町大増)に電波塔([[鉄塔]])を設置してオメガシステムに参加<ref name="hakusyo">[httphttps://www.kaiho.mlit.go.jp/info/books/h10haku/1-6.htm 平成10年版海上保安白書 海上保安庁]</ref>。[[海上保安庁]]が管理していた。単にオメガ塔とも呼ばれた。[[1975年]]に完成し、1997年9月30日まで運用された<ref name="{{r|対馬オメガ局廃止"/>index|対馬オメガ局廃止}}。[[1999年]]1月に塔の解体が行われた。現存時の高さは地上454.830 m[[メートル]]で、かつては現存・過去含め日本一高い[[建築物]]であったが、[[2010年]][[9月11日]]に[[東京スカイツリー]]が461 mメートルの高さに達したことで、現存・過去含め日本の建築物史上高さ日本一の座を明け渡した。
 
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist}}|refs=
<ref name="cao">{{Cite web|和書
| url = httphttps://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/cosmo/sokuihaihu02/sankosiryo2-2.pdf
| format = PDF
| author = [[総合科学技術会議]] 宇宙開発利用専門調査会 測位分野検討会
| title = 測位技術に関する技術変遷とニーズの変遷の相関(案)
| publisher = [[内閣府]]
| date = 2003-11-27
| accessdate = 2013-8-18 }}</ref>
<ref name="対馬オメガ局廃止/index">{{Cite web2
| url = https://www1.kaiho.mlit.go.jp/KAN3/tuho/1997_o/tuho_36.html
| url-status = live
| archiveurl = https://web.archive.org/web/20211003101138/www1.kaiho.mlit.go.jp/KAN3/tuho/1997_o/tuho_36.html
| title = 三管区水路通報第36号
| publisher = [[第三管区海上保安本部]]
| date = 1997-09-10
| df = ja
| accessdate = 2021-10-03
| archivedate = 2021-10-03 }}</ref>
<ref name="対馬オメガ局廃止">{{Cite web2
| url = https://www1.kaiho.mlit.go.jp/KAN3/tuho/1997_o/tuho_NO/k97_0709.html
| url-status = live
| archiveurl = https://web.archive.org/web/20211003101815/www1.kaiho.mlit.go.jp/KAN3/tuho/1997_o/tuho_NO/k97_0709.html
| title = 三管区水路通報 第709項 北太平洋北西部 オメガ局廃止
| publisher = [[第三管区海上保安本部]]
| date = 1997-09-10
| df = ja
| accessdate = 2021-10-03
| archivedate = 2021-10-03 }}</ref>
<ref name="status and plans">{{Citation
| url = https://ntrs.nasa.gov/citations/19750019113
| title = OMEGA navigation system status and future plans
| author1 = CDR Thomas P. Nolan
| author2 = Mr. David C. Scull
| publisher = [[アメリカ航空宇宙局|NASA]]
| year = 1974
| accessdate = 2021-10-3 }}</ref>
}}
 
== 関連項目 ==
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* [[アルファ航法]]
'''主として航空機向け'''
* [[戦術航法装置|戦術航法装置]] (TACAN)]]
* [[超短波全方向式無線標識|超短波全方向式無線標識]] (VOR)]]
* [[距離測定装置|距離測定装置]] (DME)]]
* [[無指向性無線標識|無指向性無線標識]] (NDB)]]
'''航空機着陸支援'''
* [[計器着陸装置|計器着陸装置]] (ILS)]]
* [[マイクロ波着陸装置|マイクロ波着陸装置]] (MLS)]]
'''衛星測位システム'''
* [[グローバル・ポジショニング・システム|GPS]]
85 ⟶ 136行目:
 
== 外部リンク ==
{{Commons&cat}}
* [http://www.yado.co.jp/kankou/nagasaki/tushima/omega/omega.htm オメガ塔跡地公園] - 株式会社システム工房
* [httphttps://mapps.gsi.go.jp/contentsImage.do?specificationId=1073618&dispType=1 対馬オメガ局(CKU771-C3A-12:1977年撮影)] - 地図・空中写真閲覧サービス([[国土地理院]])
 
{{DEFAULTSORT:おめかこうほう}}
92 ⟶ 144行目:
[[Category:電波航法]]
[[Category:航路標識]]
[[Category:無線測位]]
[[Category:船舶機器]]