女性解放のために悪魔信仰が重要な役割を果たしていた
by Alice Alinari
19世紀から20世紀にかけては女性の参政権が認められるなど、女性の社会的地位が大きく変化しました。この時代のフェミニズムには、実は悪魔信仰が大きく関わっていたと、歴史学者のPer Faxneld氏の調査で示されています。
Women Under the Spell – Quadrant Online
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Faxneld氏によると、1880~1930年頃、フェミニストたちはサタン(悪魔)を「キリスト教的家父長制の排除」の象徴として使用していました。サタンを崇拝する信仰をサタニズムと呼びますが、悪魔的フェミニズムは女性解放運動にサタニズムを組み合わせたもの。
by DayronV
Faxneld氏によると、「女性参政権の母」と呼ばれるエリザベス・キャディ・スタントン、女優のサラ・ベルナール、詩人のルネ・ヴィヴィアンは初期のフェミニズムを率いた人物として知られていますが、彼女たちは神を家父長制の前身、サタンをこれと戦う存在だとみなしました。当時、神秘的直観や瞑想(めいそう)を通じて神と結び付く神智学が広まっており、悪魔的フェミニズムはこれにインスピレーションを受けたものとみられています。
悪魔的フェミニズムにおいて、サタンは女性を解放する存在でした。聖書の中でイブは禁断の果実を食べたことで楽園を追放されますが、悪魔的フェミニズムでこの行為は「神とアダムによる抑圧への反乱」と見なされます。このため、サタンはイブの行為を支援する存在になるとのこと。当時のフェミニストたちは「キリスト教が理想とする結婚や妻」が、「女性の権利」とは相いれず、女性が解放されるためにはキリスト教の排除が必要と考えたのです。
特に1890年代に出版されたスタントンの著書「The Women’s Bible」は悪魔的フェミニズムの色合いが濃い本で、創世記第3章について言及し、禁断の果実を食べたイブを「男性社会からの解放者」として称賛すると共に、「最初にサタンに耳を傾けた」という点で女性は男性よりも優れていると述べました。
by pixel2013
スタントンの主張は、フェミニストの世界では珍しいものではありません。近代神智学の創唱者であるヘレナ・P・ブラヴァツキーもまた「神の敵であるサタンは、現実には、高位の神霊である」と主張。ブラヴァツキーの著書である「The Secret Doctrine」や「Isis Unveiled」はベストセラーとなりました。その後、ブラヴァツキーは1887年に「ルシファー」という雑誌を出版し、「女性権のための戦い」と「象徴としてのサタン」との繋がりを広めていきました。
また19世紀から20世紀にかけて絶大な人気を誇ったフランスの舞台女優であるサラ・ベルナールは、自分自身を悪魔として描いた彫像を持っていたことで知られています。ベルナールはしばしば男装しており、性役割の概念の破壊者としてもみなされています。
詩人・作家であったシルヴィア・タウンセンド・ワーナーも悪魔的フェミニズムの提唱者の1人として知られています。ワーナーは無神論者の父から教育を受け、幼い頃から聖書について考えてきました。
ワーナーのデビュー作である「Lolly Willowes」という本は、「サタンから力を与えられ、解放され、魔女になる少女」について書かれた小説。この本は最も顕著な悪魔的フェミニズムの例であるとFaxneld氏は述べています。本の中でサタンは良心的で思いやりのある解放者として描かれており、Faxneld氏は「ワーナーは本の中でサタンを明確な女性の解放者として描いており、男性に対するサタンの援助は重要ではないとしています」と解説しています。
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