映画を魅力的なものにする隠れた要素「コスチュームデザイン」の役割とは?
優れた映画作品のクリエイターたちに送られる栄誉ある賞のアカデミー賞には、俳優や映画監督、脚本、作曲だけでなく「コスチューム」に対する貢献を対象にする「衣装デザイン賞」があるとおり、コスチュームデザインは、映画作りに欠かすことができない重要な要素です。基本的には前面に出ることなく陰から支える「隠れた功労者」の衣装デザインが、映画をどのように印象深いものにしているのかを、ムービー「Costume Design: The Hidden Layer of Movie Magic」が解説しています。
Costume Design: The Hidden Layer of Movie Magic - YouTube
記憶に残る映画のキャラクターは、例外なく印象的なコスチュームをまとっています。
登場人物がどのような衣装を着るのかは、映画の世界でそのキャラクターの立ち振る舞いを決めるものです。
なぜなら、現実世界においては、あなたが着ている衣装はあなたがどういう人物であるかを表現するものだからです。
成功した多くの映画において、コスチュームデザイナーは隠れた功労者です。ときにはコスチュームが映画の印象を決めることさえあります。
しかし、多くの場合、コスチュームデザイナーの役割とは、映画の時代背景や世界観に合った正しい衣装を用意することです。衣装のデザインは、観客を作中により引きいれるために加える「レイヤー」のような存在です。
その映画が描かれる世界に、観客が自然に身を置けるような衣装が選ばれます。「風と共に去りぬ」では、1930年代のドレスとヘアスタイルで、南北戦争時代に観客を引き込みます。
コスチュームデザイナーは、「世界を作るレイヤー」の役割を持つこともあります。「スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望」では、レイア姫だけ異なる衣装を身にまとうシーンによって、彼女が「異星人」であることを印象づけます。
そのほかにもC-3POやR2-D2などのロボットなど……
さまざまな種族がいる宇宙の世界を表現し、観客に作品の世界観を理解しやすくしています。
オスカー賞を受賞したハリウッドの衣装デザイナーのイーディス・ヘッドの言葉からは、衣装デザインが想像以上に難しいことが分かります。
衣装デザインでは流行を取り入れることがあるとしても、映画が封切られる頃には陳腐化する恐れがあります。そのため、モダンではあるものの特定の時代背景にがんじがらめにされることなく、時代を問わずに受け入れられるデザインが求められるのです。
最先端でもなく、ありふれ過ぎてもいない、絶妙のバランスが必要です。
「8 Mile」のエミネムのスタイルはまさにこれ。
同じ2002年のミュージックビデオで登場するラッパーの衣装とはデザインやトーンがまるで違うのがよくわかります。
また、映画のコスチュームデザインは、「リアリズム」と……
「非現実性」のいずれを求めるかなど、映画の方向性によっても異なります。
そして、コスチュームの選択次第で、登場人物にフォーカスを当てることも可能です。
ジャケットやボトムのデザインは18世紀風だとしても、色使いを1970年代風にすることで、その人物だけを際立たせているという例です。
映画の衣装デザインは、「その世界」という独特のものであるだけではダメで、「こっちの世界」とのつながりを持つものである必要があります。
「俺たちに明日はない」の舞台は1930年代ですが、ワードローブは映画公開時の1960年代のものが使われているとのこと。
映画の登場人物の衣装から、人物の立ち位置が判断できます。例えば、ルーク・スカイウォーカーは格闘家のような衣装で、そこから彼が修行中であることを理解できます。
修道者のような衣装のオビ・ワンは師匠であることを伝えます。
「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」では、同じ構図が新しい弟子と新しい師匠に引き継がれています。
コスチュームとしては靴も重要なツールです。白が強調された革靴と……
茶色の革靴。
前者が金持ちであることが強調されています。
「ファイト・クラブ」では、あらゆるキャラクターが、対照的な色づかいで表現されています。キャラクターの個性や方向性が、色で表現されているのです。
「色」は印象的かつ効果的に登場人物を際立たせる要素です。
「(500)日のサマー」のオープニングシーンでは、茶色のトムと青色のサマーの衣装が二人の登場人物のキャラクターを効果的に描いています。
ダンスシーンでは多くの衣装が青色であることは、トムがサマーを想う様子を表現しています。
さまざまな要素が合わさって映画を素晴らしいものにしていますが、その要素には「衣装」がしっかりと含まれているのです。
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