2020.09.05

「エホバの証人」元信者が体験した「洗脳された人」の現実味のヤバさ

『ポケモン』がサタンって、マジかよ…!
佐藤 典雅 プロフィール

『北斗の拳』も『ターミネーター』もご法度

同じく高校生の時である。我が家で母親による文字通りのプチハルマゲドンが起きた。発端は弟が友達から借りて隠し持っていたマンガ『北斗の拳』である。これが見つかった時はもう、「覚醒剤を隠しもっていたのではないか!」ぐらいの勢いである。

クリスチャンは闘いを学ばないので、学校では剣道や柔道をしない。運動会の騎馬戦すら参加しない。実際に神戸の学校で、これが理由で退学問題まで発展したケースもある。クリスチャンはたとえ国家から死刑を宣告されても、徴兵を断るくらい闘いとは距離を置いている。それなのに暴力を美化する『北斗の拳』を家に持ち込むとは神に対する冒涜である! 

このマンガ一冊が我が家を完全な修羅場に陥れた。母親は怒り心頭で泣き叫んで完全なヒステリー状態。私と弟は顔を何度も顔を激しくひっぱ叩かれた。怒り狂う母親は子供たちの部屋にあったものをすべてひっくり返し、サタンのマンガやテープを見つけてはゴミ袋に入れていった。特にマクロスのプラモデルは「戦闘機だ!」といって大きな怒りをかった。

93年にブルックリン本部にて弟と

そもそもエホバの証人は『ドラゴンボール』もご法度である。なぜなら聖書でサタンは蛇や龍として描写されており、サタンの化身であるドラゴンのボールなんてとんでもない話だからだ。ついでにいうと、仏教の掛け軸にも龍が描かれているので、こちらももれなくサタンの宗教であるという扱いだ。

さらにいうと「ポケットモンスター」もNGになってしまう。まずモンスター(化け物)の時点でサタンだ。ブルックリン本部で、白人幹部が館内放送で「日本では、ポケットにモンスターを入れるという恐ろしいマンガが流行っているらしい」と言っていたくらいだ。

みなさんは、1997年のポケモンショックを覚えておられるだろうか? テレビアニメで放送された際の、画面からの激しいストロボ効果で、視聴者が光過敏性発作を起こし、651人の子供たちが病院に運ばれて、130人が入院したあの事件だ。エホバの証人の親たちはこの記事をみて「やっぱりサタンだからよ。子供に絶対にみせてはいけない!」となってザワついた。

 

エホバの証人の場合、本部からの指示で「R指定」の映画をみてはならないとある。日本と違って、アメリカではほとんどのアクション映画がR指定である。だから映画好きの私としては『ターミネーター2』を見れなかったのは、当時相当な痛手であった。厳格なクリスチャン家庭では『スターウォーズ』ですらウォーズ(戦争)を美化しているから見てはならない。

もう一つみなさんが意外に思われるだろうが、厳密にはスティーブン・スピルバーグの『E.T.』もご法度の対象である。なぜならクリスチャンは宇宙人を信じていないからだ。

聖書的解釈でいうと、宇宙人はサタンのまやかしである。この理由は「神の宇宙主権」論争というテーマで長くなるのでここでは割愛する。ただ一つ、もし宇宙人が実在しまうと、聖書の内容そのものが根底からひっくり返るということだけ言っておく。

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