バカにしているわけではない、はわかるけど。

とはいえこれは、非常に微妙な問題だ。中国人に「中国人キャラが語尾に『アル』をつけるのは非現実的だ」と言われたらまったくもってそのとおりだけど、『らんま1/2』のシャンプーや『銀魂』の神楽が中国をバカにしているか? というと、そんなことはないだろう。

「ドラゴンボール」や「デスノート」をいちいちネイティブのような発音をする必要があるか? と言われれば、これはもはや「英語」ではないからセーフでは? と思う。こんなの言い出したらキリがないし、重箱の隅をつつくつもりはない。視聴者の大半は日本人で日本向けのものだし、大正義「表現の自由」もある。

 

ただ、それでもやっぱり、「作品内で実在する他国の言語や文化を使うのであれば、借りる側の礼儀として敬意をもって扱いましょうね」とは思う。外国語を使うのであれば文法や発音はできるかぎり正しく、外国人キャラはちゃんと「その国の人」と描いたほうがいい。

そのキャラに縁もゆかりもないドイツ語を適当につなぎ合わせた必殺技名にするなら、「天翔龍閃(あまかけるりゅうのひらめき)」や「月牙天衝(げつがてんしょう)」のようなめちゃくちゃかっこいい和名をつけるか、造語でじゅうぶん。

日本のアニメをたくさんの人に見てもらいたいからこそ、そして実際海外で見ている人も多いからこそ。「その国の人が見ているかもしれない」という視点は大切だ。その視点で考えられないのなら、作品の中で他国の言語や文化なんて利用しない方がいい。

外国語は響きがかっこいいだけの文字の羅列じゃなくて、その国の人々がいま現在使っている「ことば」だ。その国にはいままさに人が住んで、生活を営んでいる。

海外作品でも「日本」を大事にしてもらいたいから、日本の作品でも「ほかの国の言語や文化」を大事にしてほしい。つまりわたしは、コナンの新作映画が早く見たいです。

2019年10月、NYで開催されたコミコン。セーラームーンのコスプレは毎年多く、日本のアニメの人気を感じられる。日本のアニメ、すごいのだ Photo by Getty Images
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