『シン・仮面ライダー』が継承した石ノ森章太郎の意図と先見性
単純な勧善懲悪を超えて映画『シン・仮面ライダー』を見ての第一印象は、「これはライダーではなく、浜辺美波の映画だ」だった。
さらに、しばらくして、映画『君の膵臓をたべたい』のリメイクでもあることに気づいた。
そして、昔読んだ、石ノ森章太郎の「原作」を思い出し、読み返してみた。
『君の膵臓をたべたい』との類似
映画『君の膵臓をたべたい』とは、どんな物語だったか。
浜辺美波演じる高校生「山内桜良」は、膵臓の病いで余命あとわずかと告知されている。桜良は同じ学校に通う「いちばん目立たない同級生」の男子(北村匠海が演じた)を、思い出作りの同伴者に勝手に指名する。
男子は戸惑いながらも、それにつきあい、2人は福岡へ一泊旅行に出かけ、同じホテルで大きなベッドに並んで寝る。しかし、互いに背を向けて寝て、手も触れない。
いろいろあって、桜良は亡くなり、その十数年後、青年になっていた同級生は、彼女が隠していた彼へのメッセージを見つけるーーまあ、要約すると、こんな話だ。
『シン・仮面ライダー』で浜辺美波が演じる「緑川ルリ子」も絶望的な状況にある。彼女は絶望とともに生きているが、凛としていて、それは『君の膵臓をたべたい』での山内桜良に通じる。
緑川ルリ子は、池松壮亮演じる「本郷猛」を勝手に戦いの同志に選ぶ。本郷はそれを受け入れ、2人の戦いの日々が始まる。その過程で、2人は同じ部屋に2人だけで並んで寝るが、手も触れない(少なくとも、触れ合うシーンは描かれない)。そして、彼女のほうが先に消滅し、本郷へのメッセージ映像が遺される。
いささか強引だが、2つが同じ物語構造にあると読み解けるのだ。
先に浜辺美波をヒロインにすると決まってからストーリーが組み立てられたのか、ある程度シナリオが固まってから浜辺美波がキャスティングされたのか、その事情は知らない。
似た物語になったのは、偶然なのかもしれない。
だが、浜辺美波が緑川ルリ子に起用されたことで、この映画の主人公は2人の仮面ライダーではなく、緑川ルリ子へと変質した。
それくらい、浜辺美波の存在は大きい。