その他の弓の意味については弓(曖昧さ回避)を参照。
石器時代から現代まで扱われている遠距離武器である。時代や場所とともに大きく形状をを変えている。同じ飛び道具である投げ槍よりもはるかに遠くに矢を飛ばすことができ、石器時代の狩りにおいても大きな変化を与えたが、同時に人同士の争いにも変化をもたらした。
人同士の争いには、当初しなりの強い一本の木の板や棒に糸を張っただけの弓、いわゆる「丸木弓」が使われていた。のちに青銅や鉄器の登場により、威力のある複合弓や合成弓が開発された。馬上でも射やすく威力のある複合弓は草原で使われ、合成弓は森林などで身近に使われている。またある程度水気にも耐えられる長弓など、それぞれ進化を遂げた。
現代においても弓は様々なところで活躍している。海外ではボウ・ハンティングが行われている。このボウ・ハンティングは弓で獲物を狩り、皮や肉を頂戴する狩りというよりスポーツとしての意味合いが強い。矢を当てたら同行している猟銃持ちさんに止めを刺してもらい、自分の当てた矢の場所でスコアを決める、というようなもの。矢のみで止めを刺すこともある。
なお、日本国内では弓矢やクロスボウなどを使った狩猟は法律で禁止されている。ダメ。ゼッタイ。
弓の威力は、引き絞ったときに変形した弓に溜まるエネルギーが、元に戻る時にどれだけ矢を押すエネルギーに変わるかで決まる。大雑把に言って
「同じ素材、構造なら引き尺が長い方がエネルギーは大きい」「同じ素材、構造なら長い弓の方が引き尺は長い」となる。
弓を長くすることは、弓作りの工夫の原初の姿と言える。木製(動物性素材を使わない)であったり、丸木弓であったり、靭性が期待出来ない場合に長くなることが多い。
また長弓は、長い矢が使えることも利点。長い矢は重く、飛距離と矢速を犠牲にする代わりに貫通力と軌道安定性が良い。
一方、威力が確保出来る(よく曲がり、よく戻る)なら、短い弓の方が素材調達、取り回し、機動性に優れるのもまた事実。多くの文化圏で、短くても長弓に威力で勝る弓が工夫されてきた。
弓のリム(引き絞った時に曲がる部分)を形作る素材が1種類のものを単弓(セルフボウ、丸木弓)、複数種組み合わせたものを複合弓(コンポジットボウ)と呼ぶ。柔軟な素材と強靭な素材を組み合わせることによって、よくしなり、張力の強靭な弓を生み出せる。
ユーラシア中央部では馬に乗ってステップ地帯(草原)で家畜を養う遊牧民族がいた。遊牧民達は狩りをしたり家畜を追い立てたり捕まえたりするため馬と弓は必須だが、困ったことに、ステップ地帯ではあまり雨が降らない土地である。家畜に食べさせる草はたくさん生えているが、木が生えていないため弓に使う木材が無い。そのため遊牧民族の人達は自分の周りにある物を使って新しい弓を完成させた。
この木の芯材に動物の角、腱を組み合わせたタイプの弓をホーンボウ(合成弓)と呼び、種類によっては肘まで弦を引いただけでフルドローの長弓以上の威力、飛距離を持つ。ただし、接着に膠を大量に使うために高温、多湿の地域には向かない。遊牧民の間で生まれ、大陸に広まったと考えられるホーンボウは、紀元前の時点でその構造はほぼ完成し、各民族ごとに用途に合わせて多様な種類が生まれた。
言わずと知れたジャパニーズ・ユミ。弓道も参照。
オール植物素材の複合弓、しかも上下非対称(握りの上下が上2:下1)の長弓という世界的に見ても珍しい様式。この「上長下短」の形状は少なくとも弥生時代には確立されており、魏志倭人伝の記述や銅鐸の文様からも確認できる。この形状は射手の振動を減らし、馬上で扱い易くする効果がある。また、弓自体も非常に長く(220cm前後)、その分長い矢を使用することも特徴。
平安前期頃までは丸木弓であったが、その後竹と木を膠で張り合わせた複合弓になり、またその組み合わせも複雑化していった。(現代の和弓も外見は竹のみで作られているように見えるが、実際には前後の竹の間にハゼの木が挟まれている)
現在でも弓道のほか、流鏑馬や弓に関する神事が各地で催されるなど、日本の文化に根付いている。
百年戦争で勇名を馳せたイギリスの弓[1]。
シンプルな単弓だが、イチイは部位によって2種の違う特性があり、天然の複合弓と言える。
実は構造的には、引き絞る力あたりの弓の威力への変換効率は低め。それが活躍出来たのは、扱いにくい弓を、それ以上の筋力と技量でねじ伏せたヨーマン達の人間力と、運用の妙の賜物だろう。
後には表と裏で張力の異なる2本の木材を使用した短い弓へ変化した。なおロングボウはイングランド由来ではなくウェールズ由来である。細かいが間違えないように注意しよう!
数多いホーンボウの中でも、一つの究極形とも言える。
1メートルほどという小ささにも関わらず、実戦で400メートル、専用の矢を用いれば600メートルにも及ぶ長大な飛距離を誇る(弓道の遠的競技は最大90メートル)。飛距離の世界記録保持者もトルコ弓使い。射手の姿が見えないほどの遠距離から、城の見張り兵を射抜いたなどと言う伝説も。
弦を外すと、Cの形に大きく反り返るのも特徴。
最大の帝国とともに世界を席巻した弓。
これを装備した軽装騎兵こそがモンゴル帝国軍の原動力であった。研究者によってはその強さは150ポンドはあったと考えるものもいる(現代弓道の成人男性標準は44ポンド)。
ちなみに、現在モンゴル共和国で見られる弓は下記の満州弓の影響を受けて大きさ、形状ともに大きく変化してしまっているので、元寇当時の弓を考える時には注意が必要。
同じホーンボウでも、トルコ弓とは真逆の極致が清王朝の満州族の弓である。
特徴は、大きいものでは180cmに達する、長弓といってもいいほどの偉容。半狩猟民、毛皮ハンターであった彼らは、馬で獣を追いかけながら、確実に毛皮を騎射で射抜く必要から、貫通力と軌道安定性に優れる長く重い矢(矢羽根も凄く長い)を運用出来る弓を生み出した。
多民族国家・清帝国の影響力は大きく、支配下にあった中国、モンゴル、チベットの伝統的弓は満州弓の影響を受けて大きく変容した。(取って代わられたと言っても良い)
アーチェリー強豪国・韓国の国弓(クックン)も、遊牧民のものとは異なる特筆すべき個性を持つ。
弦を外した韓国弓は大きく反り返り、Cを通り越してOの形にまで丸まる。腱の伸縮を最大限に利用しているため、小さいながらも弦を張った時点で非常に張力が強く、中国の歴史書でも言及されている。
弓道的な感じで競技としても盛んで、145m先の的を狙う。
弓術を「国技」と定めている国として、ブータンを外してはおけないだろう。
ブータンの弓の構造は独特で、この国特有の太く厚い竹を長い二等辺三角形に切り出し、◁▷的な感じでくくり合わせる。接合部が握り手となる。
ブータンの弓競技はチーム対抗戦で、130m先にある的を狙う。試合中、両チームは互いに歌を歌い、踊りをまい、相手を煽る。会の最中に「童貞」とかなじられる。ある意味弓道よりも精神力が試されるかもしれない。
ちなみにロンドンオリンピックアーチェリーでのブータン代表の成績は、64か国中61位であった。
ポリネシアやアフリカなど、多くの地域の「いわゆる」「未開」とされる人々もそれぞれの弓を持つ。
多くは森の木を使った長い丸木弓であり、また上下非対称形の弓を用いる部族もある。和弓の原初的姿を見て取れるかもしれない。
またしばしば矢は、槍ほども長いものが見られる。これは矢羽根をつける技術がない分、軌道を安定させる、威力を増す、また密林で鳥や小さな獣を狩る場合にその場に落ちて回収を容易にするなどの意味がある。
掲示板
76 ななしのよっしん
2022/09/23(金) 14:24:46 ID: fAykZPloO5
>>74
弓はある程度散開しないと集団として発射できない。また、騎兵は(近接・戦列)歩兵に比べて間口を必要とするから、密集した状態で近接戦闘を行う場合、本質的には不利な存在だ。
確かに、障害物がある限り、弓兵は安全だろう。ひどい泥濘などで接近まで時間がかかり、障害を乗り越えようと接近する人間が疲れ切る状況ならなおよい。
しかし、敵としては、単に障害に接近せず、側面か後方を脅かすか、それが出来ないほど有利な地形を占めている弓兵を主体とする軍隊の挑戦に応じない(迂回するか、自分たちが防御に入ってしまう)という方法がある。
また、戦術レベルでは、弓兵には弓兵・クロスボウ兵をぶつけて、まず相手側の弓兵の疲弊・弾薬消耗を誘うという方策もある。つまり、長時間の撃ちあいで体力を消耗し、矢を再分配しなければならなくなるタイミングを狙って、突進し、矢の嵐を弱めることができる。
まあ、世の中には「ヒャアがまんできねぇ突撃だ!」ってやってくる敵がいたので、そういう愚かな連中には、しっかり訓練され、適切に防御された弓兵は大虐殺を引き起こせたわけだな
(省略しています。全て読むにはこのリンクをクリック!)
77 ななしのよっしん
2022/11/17(木) 23:30:23 ID: TRmA+Ga1Gr
ここにおいてもやっぱあんま言及されないけど、実は弓矢は天候にかなり左右される武器で、雨風の強い日はなかなか当たらなくなる
78 ななしのよっしん
2023/09/28(木) 13:05:26 ID: BZhPTyGWu4
トルコ弓は何処にソースあんだよってぐらい参考資料が少なすぎる上に眉唾物なものばかり
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最終更新:2025/01/05(日) 06:00
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