Class403とは、かつてイギリスに存在した鉄道会社、「サザン鉄道(Southern Railway、以下SR)」及び「イギリス国鉄(British Rail、以下BR)」が保有していた特急型電車である。SR所属時代の形式は「5-BEL」。
概要
1900年代前半、SRが運行するロンドン~ブライトン間が電化され、同区間を結ぶ特急列車「サザン・ベル」を電車に置き換える事となり、その為に製造されたのが5-BELである。登場時は、ブラウンとホワイトの優雅なカラーリングで運行、編成は両端に3等制御電動車、その間に3等付随車、1等付随車、キッチン付1等付随車の3両を挟んだ5両編成が組まれていた。合計3編成15両が製造され、1933年から運行を開始、1934年に列車名を「ブライトン・ベル」と改めた。製造元は英メトロキャメル社(メトロポリタン・キャメル社とも呼ばれていた。1989年に仏アルストム社に買収された為、現存しない)。
イギリスの鉄道と言うと、蒸気機関車のほうが目立つイメージが多く、実際当時のイギリスにおいて、この車両のような動力分散方式の電車特急列車というのは非常に珍しかった。それにも関わらず、SRが電車特急を導入したのにはそれなりの理由があった。SRの営業範囲はそれ程広くはなく、営業距離も短かったが、比較的人口の多いところや、ロンドンから近い観光地等を結んでいた事からそれなりに需要の多い路線を抱えていた。その為、早い段階から電化工事等にも着手しており、これに合わせて電車の配備も進めていた為、この車両が登場することとなった(実はその前段階に別の電車も製造したりしている)。また、内装は非常に豪華であり、れっきとしたプルマンカーの一種である。が、そもそもプルマンカーは客車で造られている事が多く、電車のプルマンカーと言う点でも非常に珍しい車両となっていた。
車両性能は、当時の特急型としては申し分ない程度の性能を持っていた。モーター出力は168kwで、これが1両に4つ、一編成に8つ搭載されていた為編成 出力は1342kw。第三軌条方式・直流600~750Vの電化ながら最高速度は時速75マイル(約121km/h)となっていた。数値だけ見れば211系1000番台のかつての基本編成(2M3T5両編成)を凌駕するスペックである。イギリスは蒸気機関車だけでなく、電車の研究・開発にも着手していたのだ。
同列車の目的地とされていたブライトンは、ドーバー海峡に面した海岸沿いの都市であり、観光都市としても有名であった。特に夏にはバカンスに訪れる人々で賑わっており、上流階級の人を中心に多くの観光客がこの列車を利用していた。この為、運行区間が都心部~観光地となっている事から、日本で言うところのロマンスカーに近い印象を受ける人も居るかもしれないが、内装はロマンスカーとは比較にならないほど豪華である。イメージとしては、近鉄のしまかぜの方がまだ近いかもしれない。
戦後、SRの路線は国有化された為、同車もBRの車両となり形式をclass403と改め、1972年まで活躍した。現在は1編成が動態保存に向けて整備中となっている。他の編成も全て保存されている。
「電車」と縁の深い都市ブライトン
この列車の終点となっていた観光都市「ブライトン」は、実は「電車」とはなかなか縁の深い地であった。この5-BEL(class403)「ブライトン・ベル」の他にも、特徴的な二つの電車が走っていた。
一つは、海岸沿いを走る「ブライトン電気鉄道」。第三軌条方式(開業当初は2本のレールをそのまま給電回路に使用する方式だった)で海岸沿いを走る小さな鉄道だが、実は「ブライトン・ベル」が運行を始めるよりもずっと前の1883年に開業している。初期の車両は、開発者であるマグナス・フォルクの名前から「フォルクの電車」と呼ばれていた。現在も運行しており、水族館前~ブラックロック間の海岸沿い約2kmの距離を走っている。観光の際に利用してみるのも良いかもしれない。
もう一つは、ブライトン郊外にあるロッティングディーンまでを結ぶ「ブライトン&ロッティングディーン・シーショアー電気鉄道」。マグナス・フォルクが開発したもう一つの鉄道だが、この鉄道はこれまでの鉄道の常識を覆す、英国面全開の鉄道であった。詳しくは下記の動画を参照。
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関連項目
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