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成長を続けてきたキヤノンが、2024年12月期の決算で急失速した。メディカル事業で1651億円もの減損損失を計上したのだ。その背景には買収後の「シナジー創出策」の致命的な欠陥があるようだ。キヤノンの巨額減損損失の真因を解明するとともに、医療機器事業の挽回策を探る。(ダイヤモンド編集部 今枝翔太郎)
メディカルが急落し営業利益は激減
このままでは経営陣の責任問題に発展も?
キヤノンで「減損爆弾」が遂に爆発した。2024年12月期決算で、メディカル事業で1651億円もの減損損失を計上したのだ。
売上高は過去最高を更新し、前年比7.9%増の4兆5098億円をたたき出したにもかかわらず、メディカル事業が足を引っ張り、営業利益では前年比25.5%減の2798億円にまで落ち込んだ。
キヤノンは16年に富士フイルムとの争奪戦を制し、約6700億円で東芝から医療機器事業を買収。この事業を複合機やカメラ事業に次ぐ収益の柱として育ててきた。CT(コンピューター断層撮影)では、国内トップシェアをひた走っている。
キヤノンのメディカル事業の年間売上高は5000億円を超え、国内メーカーの中でも上位に位置している。国内医療機器市場の中での存在感は絶大だ(国内医療機器メーカーの勢力図については特集『医療機器 21兆円への挑戦』の#1『日立・東芝・パナは撤退、ソニーはオリンパスとタッグを組むも多難…医療機器業界「最新勢力図」を大公開!見えた日本勢の勝ち筋とは?』参照)。
では、いったいなぜキヤノン医療機器事業の減損爆弾に火がついてしまったのか。詳細は後述するが、その背景には買収後の「シナジー創出策」の致命的な欠陥があるようだ。
次ページでは、キヤノンの巨額減損損失の真因を解明するとともに、医療機器事業の挽回策を探る。1600億円もの巨額減損を出したキヤノンで、経営陣の責任問題に発展することはないのだろうか。