「好きで得意なこと」なのに仕事がうまくいかない。一体なぜ?写真はイメージです Photo:PIXTA

せっかく起業するなら、自分の好きなことを仕事にしたいと思うのは当然だろう。だが「好き」と「得意」が一致していた場合でもビジネスには思わぬ落とし穴があるという。「起業のプロ」として多くの起業家をサポートしてきた新井 一氏が、事例を交えてその理由を解説する。※本稿は、新井 一氏『起業 神100則』(総合法令出版)の一部を抜粋・編集してお送りする。

準備を尽くすことで
チャンスをつかめ

「準備を整えてチャンスを待つ」ことが、起業準備の本質です。準備が整っていると、「研修の依頼が来た」「6000個の大口取引の見積もり依頼が来た」「取材依頼が入った」など、自分でも想像すらしていなかったチャンスが舞い込むことがあります。

 逆に、準備ができていなければチャンスは訪れませんし、もし何らかのラッキーでそのような連絡が来たとしても、それを引き受けることができません。

 この「準備」には、戦略的に意識していた「狙った準備」と、気がついたら長年にわたり積み上がってきた「狙っていなかった準備」があります。

 例えば、何となく続けてきたブログがGoogleのアップデートによってアクセスが急増することもありましたし、最近では、大学で講義をさせていただくご縁もいただきました。本当に、何が実を結ぶのかは分からないものです。このことを象徴する有名な話があります。

 Uber Eatsで知られるアメリカのテクノロジー企業Uberは、プログラマーのギャレット・キャンプと起業家のトラヴィス・カラニックによって設立されました。構想当初、Uberは主に「富裕層のネットワーク」で活用されることを想定していました。このような新しいビジネスアイデアは、富裕層同士のネットワークから生まれることも多いのです。

 しかし、当初のUberの仕組みは今のアプリとは程遠い、非常にアナログなものでした。手が空いているタクシー運転手を探しては、「すきま時間に稼がないか?」と提案していたのです。

 タクシー運転手を1人ひとり探す作業は、非常に手間がかかります。ギャレット・キャンプはアイデアを持っていたものの、面倒なUberの経営は誰かに任せたいと思っていました。そこで、彼はXに、「有名人も多く関わっており、立ち上げ前で報酬も魅力的なビジネスがあります」と投稿し、人材を募集したのです。

 これだけ聞くと怪しいビジネスの勧誘に見えますが、それに応募したのがUber最初の従業員となり後にCEOになったライアン・グレイブスです。