「もう単品の工作機械売りでは、世界の競合に勝てない。特に中国がこれから伸びてくる。対応策を考えないと、日本の工作機械はやられてしまう。牧野フライス製作所は、工作機械のシステム化にも優れて、独自の強みがある。今回のTOB(株式公開買い付け)が成功すれば、顧客企業の生産性向上にも貢献できる」
2025年4月に工作機械大手、牧野フライス製作所にTOBを実施することを決めたニデック創業者の永守重信グローバルグループ代表は27日、日経ビジネスの独自取材に応じ、こう答えた。
ニデックは21年8月に三菱重工工作機械(現ニデックマシンツール)を買収した後、工作機械を事業の重要な柱としてM&A(合併・買収)を加速。23年11月には中堅工作機械メーカー、TAKISAWAを事前同意なきTOBで傘下に収めた。今回の牧野フライスへのTOBはそれに次ぐものだ。買い付け価格は1株当たり1万1000円。12月26日の同社株価(終値7750円)に対する上乗せ幅(プレミアム)は41.94%になる。TOBは自己株を除く発行済み株式の50%を下限とし、全株を取得した場合の総額は約2572億円となり、ニデックとしては過去最大の大型買収となる。
永守氏に今回の決断の狙いや背景を聞いた。
「もっと総合力を生かして技術を高めないと」
牧野フライス製作所へのTOBを決めた狙いは何ですか。
永守重信グローバルグループ代表(以下、永守氏):牧野フライスは、(回転工具を使って切削加工などをする)マシニングセンターや、(溝や歯車などの加工をする)フライス盤の大手です。技術力は高い。これからは技術で世界一にならないと生き残っていけない。
特に中国勢の台頭が著しい。日本の工作機械メーカーは、100年以上の歴史を持っているところが多いですが、それぞれ得意分野で生きている。もっと総合力を生かして技術を高めないといけない。当社は、21年に三菱重工工作機械を、翌22年2月にOKK(現ニデックオーケーケー)を買収し、23年11月にTAKISAWAをTOBで傘下に入れました。これで歯車工作機から旋盤まで工作機の主要な分野を集めることができた。
ですが、これからは工作機械の単品売りだけでは世界の競合との戦いに勝てません。様々な機械を組み合わせて、システムでこんな加工ができます、とならないといけない。牧野フライスには、子会社でそういうシステムをつくれるマキノジェイ(神奈川県愛川町)という会社もあります。今後は中国メーカーが日本にとっての強いライバルになります。その脅威に対応できる力をつけたい。
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