万博イヤーをターゲットに数々の再開発プロジェクトが進行中の大阪。現場をぐるりと覆う仮囲いの向こうでどんな工事が進んでいるのか。あるいは、姿を現した新たなランドマークはどのように街を変えていくのか。ここでは「巨大タワー」を鍵に、新刊『関西大改造2030 万博を機に変わる大阪・京都・兵庫』から紹介します。第1回は「大阪駅前」編です。(記事は同書のベースとなった日経クロステックの記事を転載・一部変更)

 JR大阪駅前で進む大規模再開発「グラングリーン大阪」。駅に近い南街区で、工事が大詰めを迎えている賃貸棟「南館」が2025年3月21日に開業する。グラングリーン大阪の開発事業者JV(共同企業体)9社が24年10月8日に発表した。オフィスやホテル、会議場、温浴施設、ショップなどが新たにオープンする。グラングリーン大阪のエリア全体は27年度に開業する予定だ。

2025年3月21日に開業が決まったグラングリーン大阪「南館」のイメージ(出所:グラングリーン大阪開発事業者JV9社)
2025年3月21日に開業が決まったグラングリーン大阪「南館」のイメージ(出所:グラングリーン大阪開発事業者JV9社)
画像のクリックで拡大表示
写真中央がグラングリーン大阪の南街区に建つ賃貸棟「南館」。3棟で構成する。工事は大詰めを迎えており、外観はほぼ完成(写真:吉田 誠)
写真中央がグラングリーン大阪の南街区に建つ賃貸棟「南館」。3棟で構成する。工事は大詰めを迎えており、外観はほぼ完成(写真:吉田 誠)
画像のクリックで拡大表示
24年7月31日に開業したばかりの新しい駅ビル「イノゲート大阪」(正面)。グラングリーン大阪南館(写真右手)の向かい側に立つ(写真:日経クロステック)
24年7月31日に開業したばかりの新しい駅ビル「イノゲート大阪」(正面)。グラングリーン大阪南館(写真右手)の向かい側に立つ(写真:日経クロステック)
画像のクリックで拡大表示

 グラングリーン大阪は、北街区と南街区に分かれる。その中間に広大な「うめきた公園」が広がる。うめきた公園は都市的な南公園(サウスパーク)と緑豊かな北公園(ノースパーク)で構成。24年9月6日にサウスパーク全面とノースパークの一部が先行開業している。さらに北街区に立つ賃貸棟「北館」のノースタワーも同時に開業した。うめきた公園やノースタワーは既ににぎわいを見せている。

 25年3月に開業する南館は、地下3階・地上39階建ての「パークタワー」と地下3階・地上18階建ての「ゲートタワー」、地下3階・地上28階建ての「サウスタワー」の3棟から成る。建築基準法では1棟の建物となっている。建物の外観はほぼ完成している。

 南館の敷地面積は約2万5260m2、延べ面積は約31万4250m2。設計は三菱地所設計、日建設計、大林組、竹中工務店が担当し、施工はうめきた2期JV(竹中工務店、大林組)が手掛ける。

2つのホテルと温浴施設が相次ぎオープン

 南館の目玉は、タイプが異なる2つのホテルだ。サウスタワーの5~27階に入るホテル「ホテル阪急グランレスパイア大阪」は、南館の開業と同時にオープンする。これに先立ち、24年10月21日から宿泊予約の受け付けを開始した。

 パークタワーの地上2階及び28~38階には、日本初進出となる米ヒルトンの最高級ホテル「ウォルドーフ・アストリア大阪」が入居する。こちらは25年春に開業する予定だ。

 24年9月6日の先行開業で北街区のノースタワー高層部には、同じくヒルトン系のホテル「キャノピーbyヒルトン大阪梅田」がオープンしたばかり。グラングリーン大阪には合計3つのホテルができ、客室数は合計で1042室に及ぶ。キャノピーbyヒルトン大阪梅田は308室、ホテル阪急グランレスパイア大阪は482室、そしてウォルドーフ・アストリア大阪は252室を有する。いずれも大型なホテルになり、大阪駅周辺のホテル競争が激化する。

グラングリーン大阪の全体計画図。カラー部分は25年3月21日時点の開業範囲(出所:グラングリーン大阪開発事業者JV9社)
グラングリーン大阪の全体計画図。カラー部分は25年3月21日時点の開業範囲(出所:グラングリーン大阪開発事業者JV9社)
画像のクリックで拡大表示

 グラングリーン大阪に点在する「ショップ&レストラン」のうち、南館に入居する飲食店やアパレルなど55店舗もオープンする。温浴施設やプール、フィットネスジムなどを備えた健康増進施設「うめきた温泉 蓮 Wellbeing Park」は、南館の3~4階で開業する。南館の中でも大阪駅に最も近い場所に温浴施設が誕生する。

 うめきた温泉 蓮 Wellbeing Parkは、ホテル阪急グランレスパイア大阪と提携した。ホテル利用者には優待料金チケットを提供する。ホテル上層部の26~27階に設ける「クラブフロア」の客室に宿泊する人は、温浴施設を無料で1回使える特典を付与する。

 南館4階には、貸会議室や大型ホールを持つMICE(会議や展示)施設「コングレスクエア グラングリーン大阪」もできる。木目の内装をホールに取り入れたり、会議室のカラーをグリーンにしたりする。

 駅に近く、通勤に便利な南館には、総面積約3万4000坪のオフィスフロアができる。JV9社の代表企業である三菱地所によれば、24年9月時点で約2万6000坪分のオフィス入居が内定または内定見込みだという。

 例えば、塩野義製薬は25年夏以降に、パークタワーの24~26階に本社を移転する予定だ。クボタも本社をパークタワーの15~19階に移転すると発表しており、26年5月をめどに入居する予定。ホンダのソフトウエア開発拠点や富士通の大阪拠点も入居するという。

JR大阪駅周辺には大規模なオフィスフロアを有する複合ビルが次々と誕生している(写真:日経クロステック)
JR大阪駅周辺には大規模なオフィスフロアを有する複合ビルが次々と誕生している(写真:日経クロステック)
画像のクリックで拡大表示

日経クロステック 2024年10月16日付の記事を転載・一部変更]

万博イヤーをターゲットに数々の再開発プロジェクトが進行中の大阪。大阪を訪れる人たちを呼び込もうとする京都や兵庫。技術系のネット媒体「日経クロステック」と建築雑誌「日経アーキテクチュア」は、様変わりする関西の姿を追い続けています。本書は大阪を中心に京都や兵庫まで網羅し、写真満載の現地リポートと建築メディアならではの専門的な視点で、100年に一度とも言われる「関西大改造」の真の姿をお伝えします。

川又英紀ほか(著)、日経クロステック、日経アーキテクチュア(編)、日経BP、3520円(税込み)