ならなしとり

外来生物問題を主に扱います。ときどきその他のことも。このブログでは基本的に名無しさんは相手にしませんのであしからず。

武田邦彦に対する個人的評価

2009-12-06 20:33:00 | 武田邦彦
 武田氏の外来生物問題に対する言説への突っ込みのまとめです。外来生物問題で見られた氏の特徴を記していきます。

1.他人の意見を鵜呑みにして裏を取らない
基本的に池田清彦の受け売りをそのまま書いただけで本当に正しいのか裏を取っていません。普通は複数の資料にあたって本当にそれが正しいのか調べるものですが・・・・・・。というか池田清彦が相手を批判するときは相手の意見を捻じ曲げたり、都合の悪い事実は無視するのは昔からのお家芸なんですけど。獅子身中の虫ってご存知?

2.突っ込みに対する耐性がない
批判をしているという自覚に欠けるのかこう批判したらこういった反論が来るだろう予測ができていません。批判をしたら相手から反論が来ることくらい温暖化で承知しているのではなかったでしょうか?もしかして外来生物問題に関わる人間を侮っているのかな。だとしてしてもあのレベルのしょぼさはないわ。

3.よくわからん想像が出てくる
外来生物の駆除の話で50%くらい駆除してあとは放置するようなことが書かれているんですが、駆除技術がある程度進んだ外来生物(例ブラックバス)とかで補助金もらってこういった話ってあるんですかね?こういうことを言う人に限って具体例が出てこないのはもはやお約束でしょうか・・・・・・。

ほかにもあるけどこれくらいでいいですよね・・・・・・。
 
 実質的に武田氏の文章のレベルは池田清彦の本だけ読んで分かった気になっている中高生レベルでしょう(ある程度勉強してればああはならないでしょ)。池田清彦の本に感化されて感想文を書いてみましたという感じ。個人的に環境問題のウソ系の本で特に有名な人の論理レベルがわかっていろいろ参考になりました。僕はこのような非論理的な人の言うことは鵜呑みにせずに裏を取るようにします。
まあ、たまたま外来生物問題で醜態をさらしただけで他の分野ではまともである可能性もあるのですが。武田氏はインフルエンザなどについても言及しているので詳しい人に検証していただきたいですね。

追記12/8
1と3はほぼ同じではないかとの御指摘を受け3を削除しそれにともない番号を少し変更いたしました。推敲が足りませんでした。
コメント (5)
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ここが変じゃない?武田さん3 そもそも認識が・・・

2009-12-03 23:59:14 | 武田邦彦
 今回は武田氏の外来生物問題に対する認識について突っ込みます。

>最近、マスコミや環境運動家が「生物多様性」と「外来種排斥」の2つの矛盾したことを口にしている。生物が多様化し豊かな自然ができるのは、外来種が入ってくるからであり、それを飲み込んで日本の自然ができる。

とりあえず調べるという癖をつけたほうがよろしいかと。日本の地域個体群の絶滅ではどうやら生物多様性が減ったと見なさないようですが、海外に目を向ければナイルパーチやミナミオオガシラなど外来生物が絶滅に関わった例はたくさんありますよ。

>たとえば、外来種として有名なブラックバスは1920年代に食糧確保を目的として輸入され、当時は日本の淡水魚に勝てなかった。
でも、次第に日本の自然が汚れてきたので、ブラックバスが繁殖するようになったのだ。

はぁ~やれやれ。ブラックバスは1970年から92年までの22年間に45都道府県に分布を拡大しました。普通淡水魚のような移動能力の低い生物が短期間でここまで分布を拡大することはあり得ないんですよ。というか自然が汚れたのとブラックバスが繁殖することの因果関係が述べられていませんよね。


>「外来種排斥」というのはお金になるという。ある外来種に目をつけてマスコミが追放キャンペーンをする。それを受けて運動家が環境省などに「外来種追放運動補助金」を申請し、ある場所で繁殖している外来種の50%位を毎年、殺す。

そういうことが実際にあるのなら具体例をあげて批判する方が説得力が高まりますよね。こっちとしても成果がないのに金だけ投入されるようなら批判されてもしょうがないし、問題点を指摘すべきとも思います。で、なんでそうしないの?
この人の言っていることは全体的に池田清彦の受け売りですねえ。それを精査して自分の知識としていないからこういう穴だらけな文章になるのでしょう。
コメント (1)
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ここが変じゃない?武田さん おまけ 海外でのブラックバス

2009-12-01 00:16:55 | 武田邦彦
 大変遅くなりました。武田氏のブラックバスについての言説批判のおまけです。海外でブラックバスはどのような評価を受けているのか英語のデータベースで調べてみました。

Micropterus salmoides(オオクチバスの学名)

>Introduced bass usually affect populations of small native fishes through predation, sometimes resulting in the decline or extinction of such species (Minckley 1973, in Fuller, 1999).

バスは大抵小型の在来魚の個体数に影響を与え、しばしば大きく個体数を減少させたり絶滅に至らせるということが海外の研究者によって示されています。それも日本でブラックバス問題が盛んになる前に。おそらくこういった事例を示されても武田氏は海外でのそういった報告もデタラメであるか、それに目を付けた日本の生態学者が都合よく金稼ぎのために利用したというのでしょう。

もっとも、こんなことしなくてもすでにIUCNの世界の外来侵略種ワースト100にブラックバス(正確にはオオクチバス)が入っているわけで海外での評価も決まっていると言っていいのですが。武田氏批判もあと2,3記事を書いて終わりとする予定です。それまでどうかお付き合いください。

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ここが変じゃない?武田さん2 バスとギルのコンボ攻撃

2009-11-22 20:47:01 | 武田邦彦
 はい、前回と同じく今回もブラックバスについてのつっこみを入れていきます。前回は伊豆沼を紹介しましたが、もしかしたら納得のいかない人もいるかも知れません。たとえば「やっぱり水質が悪かったわけだしほかの要因も無視できないのではないか」。うん、他の要因も絡んでいるというのはおそらくどの保全の現場においてもそうでしょう。あまたの要因が絡んでより絶滅が加速することを専門用語で絶滅の渦といいますしね。
というわけで、今回は前回より水質などの環境がいいところの事例をご紹介します。場所は京都の深泥池というところです。深泥池について簡単に説明しますと、ここには他では見られない特異な生物相をもっています。植生から言えば、地衣類の一種の世界分布の南限であり、トキソウという珍しいランの仲間も自生しています。このほかにも氷河期の生き残りと思われる生物が多数生息している貴重な場所です 。
ブラックバスが主に影響を与える水生生物相について説明します。深泥池には1970年代にはカワバタモロコやメダカ、ドンコなどといった在来魚が多数生息していました 。このころの在来魚は15種です。ですが、ブラックバスとブルーギルが確認された1979年からの数年で4種の魚が消え、この20年間で9種の在来魚が絶滅あるいは激減しました。これらはブラックバスをはじめとする外来魚の影響と思われます。ちなみにこの間に護岸や水質汚濁といった人為的影響に大きな変化はありません。
また、そのほかの水生生物でも、1979年と2002年を比較したデータによれば、フタバカゲロウという水棲昆虫やトンボ類が2002年では以前と比べ激減しています 。なぜこれがブラックバスとブルーギルの影響といえるかというと、ユスリカなど泥にもぐる水生生物は増えているからです。仮にコイの場合は底の泥をひっかきまわしますからこうはならないでしょう。

投網による調査では1979年にはヨシノボリやメダカなど多様な魚類相を持っていましたが、その後の調査(2004年まで)ではメダカは確認されず、ほかの在来魚の全体に占める割合も少なくブルーギルが優先した状態にあります。ちなみにブラックバスとブルーギルは1998年からの駆除努力により70年代からの個体の子孫と思われるブラックバスはほぼ駆除し、ブルーギルも8割以上を継続して駆除していけば2010年には100個体以下にできるという試算ができています 。
ブラックバス編のメインはこれで終わりですが、おまけも用意してあります。
 
参考資料
 深泥池の自然と暮らし,2008,p16
http://www.jca.apc.org/~non/report/mizoro-2004-hokoku.pdf 
 深泥池における魚類相の変化
深泥池の自然と暮らし,2008,p78
深泥池の自然と暮らし,2008,p168~170

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おまえらに生物多様性は語れない

2009-11-20 23:03:19 | 武田邦彦
 今回は箸休めのような記事です。
ネットで検索していたら池田清彦と武田邦彦のコラボ動画を見ることができました。

『現代のコペルニクス』#1

あほらしいので僕は前篇しか見ていません。まあいつも通りの池田のいちゃもんつけなので外来生物の部分は特に驚きはしませんでした(管理された外来生物とそうでないものをごっちゃにするとか)。こちらを読みながら動画を見てください。
しかし池田の超馬鹿な発言で腰を抜かしました。いわく「人間は非常にたくさんいるから遺伝的多様性が高い」そうです(元動画の17分30秒あたりから再生してみてください)。
はい?人間の場合は遺伝子プールがほぼ均一(9割以上は同じ遺伝子のはず)でむしろ近縁の絶滅危惧種のチンパンジーより種レベルでみた場合の遺伝的多様性は低いはずじゃなかったっけ?ここら辺は人類学を少しでもかじった人間なら常識の範疇でしょう。それにつっこめないで相槌しか打てない武田氏も嘆かわしい。生態学も含めてまともに専門用語を理解してすらいない。

なにが『現代のコペルニクス』だ。コペルニクスに土下座して謝れ。
コメント (4)
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ここが変じゃない?武田さん

2009-11-18 00:03:25 | 武田邦彦
 お待たせしました。武田邦彦氏の外来生物に対する主張についてつっこみを入れていきます。
では、武田氏の論理のおかしな所を指摘していきましょう。まず指摘するのは、武田氏のブラックバス(オオクチバスとコクチバスの総称)に対する認識についてです。武田氏はこう主張しています。

>たとえば、外来種として有名なブラックバスは1920年代に食糧確保を目的として輸入され、当時は日本の淡水魚に勝てなかった。でも、次第に日本の自然が汚れてきたので、ブラックバスが繁殖するようになったのだ。

つまり、武田氏は自然環境が良好ならバスは繁殖しないし、ほかの在来生物を駆逐することもないと言いたいのでしょう。ここでいう日本の自然が汚れたというのが具体的に何を指しているのかはっきりと述べられていませんが、おそらく水質の悪化などを指していると思われます。

それでは武田氏の主張に対する反例を挙げさせていただきます。まず、オオクチバス指定時の小委員会で使われたデータ[i]によれば、環境改変がない場所474ヶ所の内の248ヶ所でオオクチバスの被害が顕著とあります。
このデータはランダムサンプリングをしているわけではないので統計資料として用いるには注意が必要ですが、たとえ環境の変化が軽微であったとしてもオオクチバスが在来生物に猛威を振るうということがあり得ないことではないことはおわかりいただけると思います。
 
 さらに具体例を紹介しましょう。宮城県に伊豆沼・内沼という湖沼があります。ここはラムサール条約登録湿地であり、多数の水鳥とそれを支える水生生物が生息していました。もともとここの水質は悪いのですが、絶滅危惧種のゼニタナゴが漁業として成り立つほど多く水揚げされた場所でした。具体的には定置網1ヶ統1日当たり580尾が漁獲[ii]されていました。オオクチバスは1992年に220kgの漁獲があった後、1996年に700kgが水揚げされるまで漁獲はありませんでした[iii]。 
しかし、この1996年から伊豆沼・内沼の魚類相は一変します。漁獲の多かったタナゴ類、モツゴなどが大きく減少し(タナゴ類は95年までは5~11tあった漁獲が96年には0.8t[iv])、2000年の段階ではハゼ科魚類2種とメダカ、ゼニタナゴが定置網による調査で確認されなくなっています。またモロコやモツゴなども個体が大型化し、小さな個体が見られなくなっています。こうした大型化する現象はオオクチバスが侵入した水域でよくみられます。漁獲も1995年までは30~40tで推移していたのが1997~1999年には11~13tに減少しています。一方、オオクチバスの漁獲は1997~1999年にかけ急増し、毎年2~3tが漁獲されるようになりました。 この間、伊豆沼・内沼における水質は目立った変化を見せていません。タナゴ類の産卵場所となるカラスガイやイシガイなどが大量へい死しているわけでもありません[v]。つまり、目立った環境の変化がないにも関わらずオオクチバスは増え、在来種に猛威をふるったわけです。

タナゴ類が減った理由を考察してみます。オオクチバスはタナゴ類やハゼ類をよく捕食します。ここで問題なのはタナゴ類が捕食されるだけでなくハゼ類も捕食されるということです。なぜこれが問題かというと、ハゼ類はタナゴ類が産卵する貝類の宿主となる[vi]からです。つまり、ハゼ類が捕食されるということは貝類の再生産を妨げ、結果タナゴ類の再生産も妨げられるということです。伊豆沼・内沼でタナゴ類が回復しないのもオオクチバスの捕食により現存する個体群と未来の産卵場所の両方がダメージを受けているからだと思われます。
これでも十分かと思いますが、駄目押しにもう一つ用意してあります。お楽しみに。




[i] http://www.env.go.jp/nature/intro/4document/sentei/fin_bass02/ext01.pdf
[ii] 川と湖沼の侵略者ブラックバスp51
[iii]川と湖沼の侵略者ブラックバスp49
[iv]川と湖沼の侵略者ブラックバスp48
[v]川と湖沼の侵略者ブラックバスp56
[vi] タナゴ大全,2009,マリン企画p155

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