いま読むと隔世の感があるが、1999年の論文で渡辺治は「国民主義的ナショナリズム」による対抗運動について、次のようにその問題を指摘していた(強調は引用者。以下同)。 「ここで一つだけ強調しておきたいのは、支配層のこうしたイデオロギーに対し私たちは、かつて丸山真男らが考えたような国民主義的ナショナリズムで対抗することはできないのではないか、という点である。 日の丸・君が代の法制化が浮上したとき、それに反対する論拠の一つとして、日の丸も君が代も、決してあのフランス三色旗やアメリカの星条旗のように革命や民主主義的討論の中から生まれたものではないという点が、少なくない論者によってあげられた。日の丸・君が代制定の経緯については、その通りではある。しかし、私は、この反論は決定的弱点を有していると思う。それは、この議論は、国民主義的ナショナリズムも帝国主義を生んだという問題に答えられないからである。端的
