ルネ・デカルトは斜視の女性が好きだった。権威あるブリタニカにちゃんとそう書いてある。有名なフランスの哲学者にはそういうフェティッシュな嗜好があった。 これを知ったとき、ぼくはデカルトが気の毒になった。十七世紀ヨーロッパ知識人階級に、斜視の女性がそう大勢いたとは思えないからだ。彼はマヤ族に生まれればよかったのだ(マヤ族は斜視を美人の条件としたと言われている)。それとも現代に生まれるか。今の時代にはそういうフェティシズムを持つ人向けの雑誌やウェブサイトがあるからだ。 ただ『ブリタニカ』がこの事実を載せているのには理由がある。おかしなことにこの問題には深い哲学的な意味が含まれているのだ。デカルトは『哲学原理』の中で、自分が斜視の女性に惹かれるのは、子供のころの遊び友達だった斜視の女の子が好きだったからだと説明している。そしてそれに気づいたとき、フェティシズムから解放されて、斜視でない女性を愛