140店の飲食・物販業者が集まる築地市場の「魚がし横丁」は朝早くから観光客でにぎわうが、古くて急な階段を上った2階は、階下の喧騒(けんそう)がうそのように静かだ。 「銀鱗(ぎんりん)文庫」は7号館の2階にある。「食材魚貝大百科」など図鑑・事典類から「魚河岸三代目」「美味しんぼ」などコミックスまで、社史や年鑑を交え、魚や市場の資料が並ぶ。一般の人も閲覧できる市場唯一の図書室だ。 運営しているのは仲卸の有志でつくる文化団体「築地魚市場銀鱗会」。事務局長で司書役の福地享子さんは「図書室があるなんて、ほとんど知らないと思いますよ。私自身、知ったのは築地で働いて3年目でしたから」と話す。63平方メートルと小学校の教室とちょうど同じ広さ。黒ずんだ床、レトロな本棚、テーブル、椅子…昭和のまま時計が止まったかのような空間だ。 1931年に市場の文学青年たちがつくった「東京魚市場青年会」が前身で、終戦から6