インフレーションターゲッティングの先輩である英国の状況についてのThe Economistの記事の翻訳を紹介します。記事はThe Economist的に皮肉なトーンで書いてはいますが、過去3年の欧州はかなり特殊な状況にあったので、ターゲットに固執しないことを選択した英国中央銀行の選択は正しいと個人的には思います。 ーーーーーーーーーいつからターゲットはターゲットでなくなったのだろうか?2%のターゲットより高いインフレ率が38ヶ月以上継続していることが、英国中央銀行のインフレーションレポートから明らかになった。今までだったら、ターゲットが達成されてないときは「心配ご無用。中期(=2年)的にはインフレ率はターゲットを達成します。」と言ってきた。でも、今回は違う。インフレ率はこれから2年間、ずっとターゲット以上になると予想されている。つまり、5年以上ターゲットが達成できない状態が続くと見込まれて
イギリスの経済紙Economistが、まるで壊れたラジオのように、しつこく日本に構造改革を勧めてくる。この記事(日本経済:ケインズと鉄道と自動車)もご多分に漏れない。 正しいことを言っているのならば承るが、困ったことに、日本への現状認識と処方箋が完全に間違っている。 エコノミスト紙で日本関係の論評をしているのは、当たり前だが大体イギリス人だ。イギリス人が構造改革を勧めてくるのは、イギリス自身がそれによって成功した体験があるからだ。なにも日本に意地悪しようとして間違った処方箋を勧めているわけではない(と信じたい)。 イギリスの経済病はしつこいインフレと産業力の衰退であった。 イギリスのインフレーションは日本の比ではない。上の図をみてみると一目瞭然であるが、76年には24%近くに達しており、先進国としては相当なインフレ経済だった。このようなインフレ経済を作ったのは行き過ぎたケインズ政策の結果で
(英エコノミスト誌 2013年1月12日号) 財政および金融面の散財は、後退局面にある日本経済を再起動させられるだろうか? 2011年12月2日午前にトンネル崩落事故が起きた山梨県甲府市の中央道、笹子トンネルの入り口付近に集まる、救急隊員と警官たち〔AFPBB News〕 東京の西の交通量の多い高速道路(中央自動車道)にある笹子トンネルでは、天井を支える鉄製のボルトが35年間にわたり1度も検査されなかった。 12月2日、ボルトの600本以上が緩んでいたために130メートルに渡って天井が崩落し、トンネル内で車に乗っていた9人が押しつぶされた。 この惨劇は、安倍晋三氏を利する方向に働いた。安倍氏はその2日後に上首尾の選挙運動を開始し、日本のさびかけたインフラを修復するという公約もあって首相になった。 1月10日、安倍氏は公約通り、13兆円を超えると見られる巨額の公共投資――2011年の震災後の
マクドナルドのビッグマックは、29グラムの脂肪と驚くほど大量の有益な経済情報を含んでいる。 本誌(英エコノミスト)は1986年以来、このどこにでもあるハンバーガーを使って、通貨のバリュエーション(評価)を考察する気軽な指標「ビッグマック指数」を提供してきた。 バーガノミクスの流行は広がっている。 プリンストン大学のオーリー・アッシェンフェルター氏とプラハ・カレル大学のシュテパン・ユラヤダ氏は全米経済研究所(NBER)のための新たな研究報告書の中で、様々な国の生産性と賃金の差を調べる、単純ながら強力なツールとしてビッグマックの生産を使っている。 ハンバーガー経済学の要諦 両氏の研究は、本誌のビッグマック指数と同様、物価と賃金の国際比較という扱いにくい問題に取り組んでいる。その根底にあるのは、購買力平価(PPP)説だ。経済学者は、効率的な市場の間ではモノの値段があまり違わないはずだと考える。そ
(英エコノミスト誌 2012年4月28日号) 韓国は遠からず、日本より豊かになるかもしれない。 5月22日に正式オープンする電波塔と展望塔を兼ねた東京スカイツリーは高さ634メートルで、アジアで一番高い建物になる。これは、日本が首位の座を保とうとする最後の挑戦になるのだろうか? 長年にわたり、日本はアジアで最も裕福で、最も強い経済国だった。日本はアジアで初めて工業化した国であり、アジアの虎と呼ばれる新興国(香港、シンガポール、韓国、台湾、そして時間が経ってから中国)は、日本の軌跡をたどってきたに過ぎない。しかし今、日本は着実に追い抜かれている。 師を抜く「アジアの虎」 中国経済は今や日本経済より大きくなったが、あまり注目されていないのは、新興工業経済地域(NIEs)と呼ばれるアジア諸国が、次々と日本より裕福になってきていることだ。 大方のエコノミストは、生活水準を比較する最善の方法は、各国
欧州や米国から訪れる喫煙者にとって、日本は喫煙天国だ。昨年の大幅な増税にもかかわらず、東京のたばこ1箱の値段は今でもロンドンやニューヨークのおよそ半分だ。 飲み屋からはたばこの煙がもうもうと吹き出している。喫煙が社会的な不名誉になることもほとんどない。野田佳彦首相は1日2箱吸う愛煙家だ。 日本政府は2004年に国際的なたばこ規制枠組条約に署名したにもかかわらず、世界第3位の規模を誇るたばこ会社、日本たばこ産業(JT)の株式の50%を保有している。 そのうえ、日本の国会では、喫煙者と彼らの悪癖を支える高齢のたばこ農家は、通常は皇族だけに向けられるような配慮と敬意をもって扱われている。 たばこ増税は立ち消えも なぜか? それは、10月20日に会期51日間の臨時国会が始まり、野田首相が、発足後7週間の政権の最優先課題の達成――主に3月の津波によって壊滅的な被害を受けた東北地方の復興費用を賄うため
(英エコノミスト誌 2011年10月1日号) 病に苦しむ英国経済には金融緩和と緊縮財政の軽減が必要だ。 世界経済の展望は、2008年秋以降で最も厳しく見える。バラク・オバマ米大統領は、ユーロ圏の危機が「世界を脅かしている」と発言した。欧州大陸への輸出に大きく依存する英国企業は苦しんでいる。 英国でも最大級の企業であるBAEシステムズは、欧米諸国で防衛費が削られていることを理由に国内で3000人規模の人員整理を計画している。英国経済はこの1年、ごくわずかに成長したが、その小さな勢いさえも失われつつある。失業手当の受給者数は、不安なほど急増している。 この暗雲を振り払うために、英国の政策立案者にできることはあるだろうか? 赤字削減計画に影を落とす景気減速 救いがあるとすれば、ユーロ圏の不安定な地域から慌てて逃げ出している債券投資家たちが、英国は財政再建に向けて正しい対策を講じていると確信してい
(英エコノミスト誌 2011年9月24日号) 富裕層は今よりも多くの税を負担する必要がある。だが、富裕層の増税には良い方法と悪い方法がある。 角笛が吹き鳴らされ、猟犬たちがうなり声をあげている。世界の先進国のいたるところで、富裕層の増税を狙う「狩り」が進行中だ。 フランスとイタリアでは、最近まとめられた緊縮予算で、年収がそれぞれ50万ユーロ(68万ドル)、30万ユーロを超える層に対して、3%の増税が課された。英国では、年収15万ポンド(23万5000ドル)を超える層に対して労働党政権が設定した50%という所得税「暫定」最高税率について、廃止を検討したというだけで保守党が非難を浴びている。 そして今度は、米国のバラク・オバマ大統領が新たな赤字削減計画を発表し、富裕層に照準を合わせた増税案を打ち出した。 この計画には、年収100万ドルを超える世帯が負担する平均税率が、「中間層」世帯を下回ること
(英エコノミスト誌 2011年9月10日号) 政治家が欧米の恐ろしく高い失業水準を引き下げることは不可能ではない。 地理的な想像力を多少働かせると、欧米の失業問題の大きさが伝わりやすいかもしれない。主に富裕国からなる経済協力開発機構(OECD)の加盟国全体で失業者数は4400万人いる。もしこの人たちが1つの国に住んでいたとすると、その国の人口はスペインに匹敵する。 当のスペインは失業率(21%)が西側諸国で最も高く、失業者の数はマドリードとバルセロナを合わせた人口に等しい。 米国では、1400万人という公式な失業者は、同国で5番目に人口が多い州を形成する。これに、望む量の仕事を得られない「不完全就業者」1100万人を加えると、テキサス州の規模になる。 欧米の労働市場が一様に暗いわけではない。例えば、ドイツの現在の失業率は金融危機の前より低い。 だが先進国の大部分では、失業率が2009年のピ
(英エコノミスト誌 2011年9月3日号) 大卒という学歴はもはや、経済的な安定を与えてくれない。 先進国ではそろそろ、高校を出た何百万人もの若者が両親に涙の別れを告げ、大学で新たな生活を始める頃だ。中には純粋な向学心に燃えている人もいるだろう。しかし、大半の人は同時に、大学で3~4年勉強すれば(その間、巨額の借金を積み上げることになる)、給料が良くて安定した仕事にありつく可能性が高まると信じている。 年長者はこれまで彼らに、教育こそがグローバル化した世界で成功するための最善の備えだと言い聞かせてきた。ブルーカラー労働者の仕事は海外に流出し、自動化されていく、というのがお決まりの台詞だ。中退者はカネに窮する不安定な生活を強いられるが、大学を卒業したエリートは世界を股にかけることができる、と。 そうした見方を裏付ける証拠もある。ジョージタウン大学の教育・労働力センターによる最近の研究は、「高
(英エコノミスト誌 2011年8月27日号) 英国の巨額の財政赤字にもかかわらず、有り難いことに長期金利は低い。 米連邦準備理事会(FRB)元議長のポール・ボルカ―氏はかつて金融市場を、時折、嵐が直撃する海になぞらえたことがある。「海が荒れている時は大きな船に乗っていた方がいい」と同氏は述べた。 だが最近の出来事はそうした論理を覆した。市場のスコールは、イタリアとスペインを含む、ユーロ圏の船隊の大型船舶を転覆させた。不安に駆られた投資家は代わりに、ユーロ圏の中心から離れたスウェーデンやデンマーク、そして英国の債券市場に殺到している。 経済が脆弱で、民間債務は巨額、インフレ率が高いうえに、膨大な財政赤字を抱えている英国は、とても安全な避難先とは言い難い状況にあるにもかかわらず、英国の10年債利回り(つまり、財務省が資金を10年借りるために支払わなくてはならない金利)は8月、2.2%という過去
(英エコノミスト誌 2011年7月2日号) 景気過熱のリスクが最も大きい新興国はどこか。 今から30年前「新興市場(emerging markets)」という言葉が、当時、世界銀行に勤務していたアントワン・ヴァン・アットマール氏によって作られた時、それらの経済圏は世界の国内総生産(GDP)の3分の1を占めていた(購買力平価ベース)。それが今では、半分以上を占めている。 それ以上に劇的なのは、新興市場が過去5年間で、世界の実質GDP成長の5分の4以上を生み出したことだ。 過熱リスクが高い国をランキングすると・・・ これらの新興国が重要であるにもかかわらず、多くの評論家はいまだにそうした国々を、先進国については決してしないようなやり方で一括りにする傾向がある。 インフレの高進、過剰な銀行融資、大量の資本流入に関するニュースの見出しは、事実上すべての新興国が過熱していることを示唆しているように見
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