「図説 日中戦争」P88-91より。 中国軍と中国市民の被害 南京戦は南京を占領するのが目的だったが、中国軍を撃滅するのもまた重要な目的であった。だが敵軍を撃滅できるのは、相手が徹底抗戦した場合の話だ。相手が投降してきたらどうするか、日本軍としての明確な方針がなかった。捕虜が大量に出た時に備えての準備、たとえば何万でも収容できる捕虜収容所を作るとか、食糧や衣料の準備をするとか、医療団を結成するとか、何の準備もしていなかった。 数百、数千、ときによっては万を超す中国兵を捕虜として困り果て、上級の司令部に「どうすればよいか」と問い合わせた部隊が多かった。ある参謀は殺せと言い、ある参謀は釈放せよと言ったと伝えられている。最高指揮官の巌とした方針がなかったことを物語る。第一線ではとまどいつつも処刑したケースが多かった。 俘虜といい、捕虜といい、名称はともかく、投降したら保護するのが文明国同士の戦争