潮の香りに誘われるように明石駅から港へ向かってブラブラ歩いていると、程なく魚の棚という粋な名前の小さな市場に出くわす。近海で獲れた魚が並ぶ活気ある市場を抜けると海はすぐそこ。港には赤茶色の底曳網が印象的な漁船が停泊しており、淡路島に渡る高速船もここ明石港から出航している。石原裕次郎が東京から熊本へ古いジープを運ぶロードムービー“憎いあんちくしょう”で、追いかけてくる浅丘ルリ子演じる恋人を撒くために淡路島から四国へ渡る場面で登場したのが明石港だ。そんな港を背にして創業時と変わらぬ昭和の風情を残す成人映画館『本町日活』がある。エクセスポルノ封切という大きな看板と日活Kマークが堂々と掲げられた入口から中に入るとロビーの壁にはロマンポルノ時代に一世を風靡した片桐夕子や宮下順子など女優たちの顔写真が飾られている。場内をコの字に囲むロビーには創業時から変わっていないであろう大きく非常口と書かれた扉が設