「ここじゃ生きられない けどここが好き 好きって分かった うれしい」*1 本稿ではべネターの反出生主義*2に私なりに向き合ってみたい。 誰にとっても、この世に生を受けることは、生まれてこないことよりも必ず悪い。生まれてくることは常に害悪であるーー そう主張する彼の本は、人生に悲観的な私にとっては極めて魅力的な思想に映った。彼の思想は障害者差別や優生思想ではない形で、私の辛さを説明し受け止めてくれるように思えたからだ。 しかし次第に疑問が頭をもたげてきた。ベネターが倫理的な問題を説こうが何を言おうが、人々はお構いなしにどんどんと生殖を行う。物理的に可能で、禁止されておらず、やりたいことであれば、人はそれをやるだろう。別に第三者の許可など微塵も必要としてなかろう。現にできるのだ。それにどう対応していくのかについて、私は現実的な筋道を聞いた例が無い。物理的な手段であれ法律を通じてであれ、理想を実