エナジックスポーツ野球部を率いる神谷嘉宗監督。創部3年目でチームを沖縄県春季大会の頂点に導いた【写真:長嶺真輝】 海を越え、甲子園から沖縄に大優勝旗を持ち帰った高校は2校しかいない。私立の沖縄尚学と興南だ。沖縄の高校野球界は近年もこの両雄が軸だが、この春、そこに割って入る異色のチームが現れた。同じく私立の「エナジックスポーツ高等学院」(以下、エナジック)である。まだ創部3年目ながら、機動力を重視した「ノーサイン野球」を武器に春の県大会で沖縄尚学や興南を打ち破り、頂点をかっさらった。やけにカタカナが目に付く長い校名、新興チームがあうんの呼吸で見せる縦横無尽の攻撃――。謎めいた高校の正体を紐解く。 4月10日、沖縄県春季大会の決勝。エナジック対興南。日中は気温が25度近くまで上がり、夏の気配を感じる一日だった。熱気漂うスタジアムで、エナジックの三塁ベンチ側に終始穏やかな表情で選手たちを見守るコ