釜石の丘の上からは、この町の有名な防波堤を一望することができる。3年前に完成したばかりのこの堤防は、最深63メートルという世界一の水深を誇り、1200億円という巨費を投じて作られたものだ。それが今では壊れてしまっている。 眺めの良いこの場所からは、防波堤が壊れた結果も容易に見渡すことができる。3月11日の大地震が引き起こした壊滅的な津波により、町の大半が流されてしまったのだ。 こうした光景を見ていると、釜石(そして、海岸線を南に下ったところにある、地震で損傷した原子力発電所の危機)の教訓は、科学技術で自然を飼いならそうとする人間の努力が無駄であり、逆効果でもあるということだと結論づけたくなるかもしれない。 本紙(フィナンシャル・タイムズ)の読者投稿欄に今週書かれていたように、古代ローマ時代のストア派哲学者であるセネカは2000年近く前に、死は自然なことであり、死を恐れることこそが最大の問題