大統領候補になったのは「大した話じゃない」 今年の3月でジジェクは75歳になった。金融危機について語った結果、最近では思想界の「ロックスター」として名を馳せた。彼のラカン派的世界観も、人々が政治と精神分析の関係に興味を持ちはじめるなかで、改めて注目されている。 ロラン・バルト以来のわかりやすいポップカルチャー批評理論を展開する『スラヴォイ・ジジェクによる倒錯的映画ガイド2 倒錯的イデオロギー・ガイド』(2012)など、映画製作もおこなった。この4年で9冊の本を著し、1989年のデビュー作にして、ときに代表作とも言われる『イデオロギーの崇高な対象』から数えると、(共著書を除けば)50冊を書き上げたことになる。 1990年にスロベニアで共産党体制が崩壊したとき、ジジェクはスロベニア自由民主党から大統領候補として擁立された。本人いわく、これはそれほど大それた話ではなかったらしい。ジジェクはあくま