今回は、ITpro編集部井上健太郎氏の記事「想定外」が無くならない真の原因に触発され、「想定外」に関する私見を述べることとしよう。 東日本大震災をめぐる様々な記事を読むと、井上氏が指摘するとおり、「想定外」という用語の意味として、「そのようなリスクを予想できなかった」と「予想はしていたが、対策を実施すべき問題とは認識しなかった」の2種類が混用されている。しかし、経営責任の面から考えると、両者は明らかに異質である。 前者の場合には、そもそもリスクの存在を認識できなかったのだから、対策を実施しないのも当然だ。経営者が特に不勉強だったなどの事情が無い限り、その責任を追及するのは酷であろう。しかし後者の場合には、リスクが予想されたにもかかわらず、「対策を実施しない」と判断したことになるので、それに対して経営責任が発生する。 このように性質が異なる意味を1つの用語で表示することは、経営責任の曖昧化に
福島第一原子力発電所事故の本質を探るという目的でFUKUSHIMAプロジェクト(http://f-pj.org/)を立ち上げたのは、2011年4月のことだった。賛同者から寄付金を募り、それを資金に事故の検証を進め、その結果を書籍というかたちで公表するという枠組みである。この活動の一環として、5月には、日経エレクトロニクス5月16日号で『福島原発事故の本質 「技術経営のミス」は、なぜ起きた』と題する論文を発表し、そのダイジェスト版ともいえる記事を日経ビジネスオンラインで公開した。 ここで私が主張したのは、電源喪失後も一定時間は原子炉が「制御可能」な状況にあったこと、その時間内に海水注入の決断を下していれば引き続き原子炉は制御可能な状態に置かれ、今回のような大惨事は回避できた可能性が高いことである。つまり、事故の本質は、天災によって原子力発電所がダメージを受けてしまったという「技術の問題」では
はじめに 12日1号機の水素爆発、14日の3号機における水素爆発、15日2号機のサプレッションチェンバー爆発。これら相次ぐ事故によって、福島第一原発から今まで放出されてきた放射性物質の大部分は15日までに放出されてきたものであるかのように東電・政府は発表しています。 ところが、もっとも重要な放射能汚染は3月21日に起きていることは、あまり一般には知られていません。その汚染源が3月20日-21日にかけての3号機格納容器内爆発であること、それを東電・政府は当然知りながら、隠蔽していること―これがほぼ「事実」であると断定できるだけの判断材料がすでに揃いました。 ちなみに、こうした結論の大部分は、実のところ、以前に私が、3/24までに出したものです。それについてはTwitterで当時連続ツイートして、その成果をTogetterにまとめました(http://togetter.com/li/11529
久保利英明弁護士(日比谷パーク法律事務所代表)は、企業のガバナンス問題やコンプライアンス問題で警鐘を鳴らしてきたビジネス弁護士の大御所。その久保利氏が、福島第1原子力発電所の事故によって強制避難や農蓄産物に大きな損害を受けた生産者・流通業者側の代理人となった。 なぜ企業を守る側のプロが東京電力相手の代理人になったのか。今回の原発事故について緊急出版した『想定外シナリオと危機管理――東電会見の失敗と教訓』(商事法務)についても話を聞いた。(聞き手は、黒沢正俊=出版局主任編集委員) ―― 福島第1原子力発電所の事故を受け、本を緊急出版されました。その理由は何ですか。 久保利:福島原発の事故について新聞・雑誌を丹念に調べた結果、恐ろしいことが2つ分かった。1つは原子力発電所というのは思っていた以上はるかに恐ろしいということ。もう1つは東京電力がまともな会社だと思っていたけど、全然まともじゃなかっ
東日本大震災が起きた直後、中国で食塩が売り切れる事態が起きた。食塩中に含まれるヨウ素を摂取すれば放射性物資が体内に入り込むのを防げるというデマが広がったためだ。 この記事を読んだ私は嫌悪感に襲われた。隣の国で多くの人が死んでいるのに不謹慎だと。放射性物質が漏れても、風向きを考えれば中国の被害は少ない。そもそも中国からの汚染物質でいつも迷惑しているのは風下側の日本だぞ…。頭の中で次から次へと悪口がわき上がった。 頭に血が上った私は知人の中国人に不満をぶちまけた。「こんなバカげたデマが広がるなんて中国の教育レベルは低い」とまで言った。相手は反論することなく自嘲気味に答えた。「中国では政府が『安全』と言う時は本当に危険で、逆に『危険』と言う時は安全だと人々は考えてしまうんですよ」と。 当時、日本発の放射能汚染は自国にまで及んでいないと中国国営メディアが連日報道していた。人民の不安を和らげるための
復興構想会議が6月の25日にまとめた「提言」を読んだ。 各方面の論評で、おおむね共通しているのは、「提言」が「具体性を欠いて」いるという指摘だ。その通りだと思う。「提言」は断片的で、抽象的で、総花的で、肝心な部分では言葉を濁している。 とはいえ、法律上の権限や予算の裏付けを持たない復興構想会議発の言葉が、理念的な言及から外に出られないのは、考えて見れば仕方のないことだ。 一読して、まず最初に感じたのは、文体の湿度の高さだ。 なんというのか、全体に漂う文学趣味みたいなものが、ひとつひとつの提言の信憑性を毀損している印象を受けたのだ。卒業式の答辞を読む女子高生がそんなに厚化粧で良いのか、という感じに近い。いくらなんでも下瞼のアイラインは自粛しておくべきだったんじゃないのか? 「前文」は、こんなふうにはじまる。 《破壊は前ぶれもなくやってきた。平成23年(2011年)3月11日午後2時46分のこ
5月21~22日、中国の温家宝首相が日中韓サミットのため訪日した。同首相が希望していた通り、21日には日韓の首脳とともに被災地を訪れた。しかし中国の中央電視台(中央テレビ局、CCTV)は同首相の被災地訪問をあまり大きくは扱わなかった。 21日お昼のニュース「新聞30分」ではほんの数秒間報道しただけだったし、夜7時からのニュース「新聞聯播」でもわずか2分ほどだった。1番目のニュース「パキスタンとの国交60周年記念に祝電」が3分強、2番目のニュース「全国人民代表大会常務委員長・呉邦国がナミビア共和国を友好訪問」が約5分間。この後に、ようやく3番目として、国務院総理(国家首相)温家宝の訪日を報道した。 22日のお昼のニュース「新聞30分」はこのニュースを全く取り上げなかった。夜7時の「新聞聯播」はさすがに7分強を割いたが、放映の順番は3番目だった。やはり「呉邦国とナミビア」報道(5分強)の後でし
東京電力は、今月の15日、福島第一原子力発電所の1号機について、以下の発表をした。すなわち、15日現在の暫定的な解析結果によれば、1号機は、地震発生から16時間後には燃料の大部分が溶融・落下する、いわゆる「メルトダウン」の状態に陥っていた可能性が高いというのだ。 続いて、24日には2号機と3号機がメルトダウンしていたことも認めている。東電がまとめた報告書によれば、1~3号機のすべてで、燃料棒はほぼ完全に溶融・落下し、原子炉圧力容器には穴が開いている。1号機と2号機については、格納容器にも損傷が及んでいる可能性がある。なんということだろう。 メルトダウンが起こってから、それを確認するまで2カ月以上が経過していた計算になる。 なるほど。 東電が、震災以来、事態を把握していなかったのだとすると、この2カ月の間、われわれは行き先不明のバスに乗っていたことになる。計器はめちゃめちゃで、ドライバーは意
5:52 訳の水素爆発は誤り。水蒸気爆発とご指摘がありました。ありがとうございます。 解説者:米国 フェアウィンズ・アソシエーツ社チーフエンジニア アーニー・ガンダーソン氏。米国のスリーマイル原発事故の際、事故調査団のメンバーでもありました。 http://en.wikipedia.org/wiki/Arnold_Gundersen。 翌日の4月27日、アーニー・ガンダーソン氏が福島原発の政府の対応等について語っている動画は こちら (http://www.youtube.com/watch?v=f78mSUbwIeM)。 元ネタ:http://www.universalsubtitles.org/ja/videos/2TnNJkefdfyZ/ja/72595/ の動画の字幕を多少見やすくしただけ。
気になる記事をスクラップできます。保存した記事は、マイページでスマホ、タブレットからでもご確認頂けます。※会員限定 無料会員登録 詳細 | ログイン 1923年9月1日。日本史上最悪の被害をもたらした、関東大震災が発生した。東京都、神奈川県を中心に、死者・行方不明者は10万人を超え、首都の金融システムも麻痺状態に陥った。金融システムが機能しなくなってしまったため、決済などが不可能になり、日本経済全体も大混乱に陥ってしまったのである。 震災発生の翌日(9月2日)に山本権兵衛内閣の内務大臣に就任した後藤新平は、その日の深夜には「帝都復興」のための復興根本策を起案した。後藤新平が帝都復興のために用意しようとした予算は40億円(「関東大震災発生後における政策的対応」国立国会図書館 ISSUE BRIEF NUMBER 709[2011.4.28.]より。以下同)。当時の一般会計予算(約15億円)の
気になる記事をスクラップできます。保存した記事は、マイページでスマホ、タブレットからでもご確認頂けます。※会員限定 無料会員登録 詳細 | ログイン 福島第1原子力発電所(原発)事故の被害者に対する賠償問題で、5月10日、政府は「事前に上限を設けずに賠償を実施すること」など、支援の前提となる6項目の確認事項を東京電力(東電)に提示し、11日、東電はその受け入れを正式に表明した。これにより賠償の枠組みが決着し、東電は国家管理のもとで再建に動き出した。この確認事項は、電気料金の値上げを最小限に抑えつつ、被害者への賠償責任を東電が貫徹することを前提としている点において、一定の評価を与え得る。 しかし今後、この議論を広く進めるに当たって、課題が2つある。1つは「今後も電力事業を地域独占のままに保っていいのか」という課題。もう1つは「この原発事故の原因の本質は何か」という課題だ。 第1の課題について
震災による「消費の自粛」で、観光業はもっとも打撃が大きかった業種と言える。人々は外に出ることを控え、輸送業も低迷を続けている。 だから、観光バスも手がけるこの会社は、ダブルパンチを受けているはずだった。 イーグルバス。 埼玉県川越市を本拠地に、周辺の日高町、ときがわ町で路線バス事業を手掛けている。だが、企業の歴史は「イーグルトラベル」という旅行代理店としてスタートしている。今でも旅行業は会社の柱の1つだ。その後、1980年にバス事業に進出、送迎バスや観光バスで少しずつ拡大してきた。そして、21世紀に入って念願の路線バス網を任される企業へと飛躍した。 バスと観光。この「被災2業種」とも呼べる事業で、イーグルバスは3月の売上高が前年同月比でプラスになっている。 なぜ、そんなことが可能だったのか。 イーグルバスは、バス業界では有名な存在となっている。自社のバスがどこを走っているか、すべて把握する
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