私たちは他者の存在なしにこの世界で存在できるのだろうか。たとえば音楽家にとって他者とは? 向き合うのは常に自分自身か、演奏家仲間か、それとも聴衆か。昨年、ショパン国際ピアノコンクールで51年ぶりの日本人最高位タイの2位に入賞したピアニスト反田恭平さん(27)は、「芸術家は孤独」としつつ、「僕はほかの誰かのために弾く」と語る。既存の枠にとらわれない音楽活動でも知られる反田さんに聞いた。 ――2位入賞という素晴らしい結果だったショパン・コンクールですが、出場には周囲の反対もあったそうですね。 「なぜ出る必要があるの?という声は多かったですね。というのも、自分で言うのも恐縮ですが、それまでも『コンサートチケットが取りにくいアーティスト』と言っていただいていたものですから、別にコンクールに出なくても……といった疑問の声でした。実際にリスクは大きい。僕自身も当初、迷いを感じていたのは事実です。自分の