『選挙』『精神』などの「観察映画シリーズ」で知られる映画作家、 想田和弘さんによるコラム連載です。 ニューヨーク在住の想田さんが日々「観察」する、 社会のこと、日本のこと、そして映画や芸術のこと…。 月1回の連載でお届けします。 第17回 デジタル化は映画の死か ニューヨークの自宅近くにある「Museum of the Moving Image(映像博物館)」で「溝口健二特集」が開催された。巨匠・溝口は、日本映画データベースによれば生前100本の映画を監督したが、その大半は戦争などで失われ、現在では30本しか残っていないという。今回の特集は、その全30作品を、すべてフィルムで鑑賞できるという貴重な機会である。徒歩でいける距離にあるし、こんな機会はたぶん今後は訪れないと思うので、可能な限り通って合計17本を観た。 いま僕は「すべてフィルムで鑑賞できる」とわざわざ書いた。「フィルムで撮られた昔
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