【ロンドン=内藤泰朗】英有力経済紙フィナンシャル・タイムズ(FT)の日経新聞への売却は、身売りする新聞が続出する英国でも衝撃を与えている。黒字経営の有力紙さえ、所有者の事情で売却される現実が露呈したためだ。インターネットメディアの台頭で経営環境は激変。言論の自由を守ってきた英新聞界が、時代の波に洗われている。 「最良の英紙まで売られるのは寂しい」「日本企業のPR紙にならないことを祈るだけ」…。日経によるFT買収について、英国の関係者からは「寂しさ」や「不安」が聞こえてくる。 FTは欧米の政財界に強い影響力を持つ。黒字・拡大経営を続けてきたが、売却の背景にあるのは、60年近く所有した英教育最大手ピアソンが、「本業の教育に注力する」と経営方針を転換したことだ。 買収交渉で英米系企業はいち早く撤収。日経側が1600億円の巨額を提案し、ドイツのメディア大手アクセル・シュプリンガーから勝利を奪った。