1 ふと思いたって、村上春樹の『ノルウェイの森』の英訳版を読んでみた。 Haruki Murakami: Norwegian Wood translated by Jay Rubin Vintage Books London 2003 この小説には心を病んだ人物が何人も登場する。統合失調症。虚言症。発達障害。その他。もちろん『ノルウェイの森』はフィクションだから、登場人物は架空、そして病気も架空と読むべきだろう。それでも私は本稿で、実際の病気と、『ノルウェイの森』に描かれている病気を対比してみようと思う。そんな対比にどれだけ意味があるかはわからない。少なくとも作品評論としては全く無意味であろう。だがそもそも私は評論をするつもりなどないし、村上春樹自身が、 『ノルウェイの森』のときは、とにかく全部をリアリズムで書こうとした。 と言っていることを知って(『スプートニクの恋人』を中心に 聞き手