「自分を肯定できないのは愛されなかったからだ」という考え方があります。 「人は自分の人格を全て受け入れられてはじめて自己肯定感を持て、安心して生きていける。不安感が先に立つ人は、幼い頃愛されなかったからで、自分を全面的に受け入れてもらう必要がある」というような内容です。 本当でしょうか? 結論を先に言うと、成熟はむしろ自己肯定感の破壊によっておこなわれるのではないか。 (そして僕はその結論に違和感を覚えています) 精神分析では成熟の過程を、エディプス・コンプレックスという図式で説明します。 エディプス・コンプレックスはその名の通り、神話のエディプスから由来しているのですが、その名を用いず、簡単に述べると次の通りです。 人は、生まれてきたときは未成熟な状態で生まれてきます。それ故、庇護を必要とします。完全に受け身であるが故に、全てを周囲に委ねて引き受けてもらう存在です。子どもは周囲と自分を明