評価:☆☆☆☆☆ ユダといえば裏切り者の代名詞である。僅かなカネと引き換えに、キリストを売り渡して処刑させた、キリスト教史上最大の悪人。ユダを擁護する人など誰もおらず、ダンテがユダの地獄で永遠に苦しむ姿を表現したように、ユダの評価はマイナスでしかありえない。 ところが、ユダは裏切りものではなかったと主張する書物が、歴史の奥から忽然と姿を現したのである。それこそ、『ユダの福音書』。初期キリスト教の時代に書かれたこの知られざる福音書によれば、ユダはキリストの望みを叶えるためにキリストを官憲の手に引渡した、とされる。その辛い役割を果たすことになるユダは、むしろキリストの友人であり理解者であった。 この衝撃的な書物の発見から内容の理解までには実に長い時間が必要だった。本書は福音書が辿った運命と、明かされた新たなキリストとユダの像を余すことなく伝えている。発見されたユダの福音書が辿った数奇な運命は、