日本人には馴染み深い「癒し系」作品の人気が、海外でも高まっている。英国の研究者である筆者が、海外の視点から癒し系の魅力を語るとともに、物語によって実際に人を癒す試みについて、興味深い例を紹介している。 西洋の伝統とは相容れない 日本研究者のポール・ロケットによると、「癒し系」とは穏やかさの美学を通じて、疲れた読者を癒すことを目的に作られた日本の物語ジャンルだ。彼が述べているように、この目的を達成するため、それらはプロットに衝突や対立というものがほとんど、あるいはまったくない物語として提示される。 だが、このシンプルなアイデアは、対立こそが物語を展開する鍵だと考えられてきた西洋の物語の伝統とはいくぶん対照的なものだ。脚本家であり、世界で最も人気のあるシナリオ講師のロバート・マッキーは、「対立を通じてしか物語は前進しない」と述べている。 しかし、教育者でジャーナリストのパトリシア・タンが指摘す