たった一人で舞台に上がり、扇子と手ぬぐいだけで何人もの人々を演じ分け、滑稽なお話で観客を笑わせる落語。江戸時代に花開いた落語は今日まで”話芸”として受け継がれ、寄席だけではなくテレビやラジオなどでも楽しめる身近な芸能として親しまれてきました。落語のお話には、江戸時代の街並みを舞台に繰り広げられる人間模様が描かれ、その日常に潜むおかしさには現代の私たちが共感できるものが多くあります。中でも名作落語とよばれる演目は、師匠から弟子へ口伝えに教えられ、その時々の名人によって磨かれて今に伝わっているものです。こうした芸の継承からは落語家たちの様々な苦悩や葛藤が生まれ、それらがテーマとなり漫画やドラマ、小説などの新たな物語が生み出され、高い人気を得ています。 本展では、『昭和元禄落語心中』(講談社「BE・LOVE」)を幕開けに、落語の魅力や知識に触れるとともに、今も語り継がれる名作落語の中から選りすぐ