健康や美容のため、食欲を抑えるにはどうすればいいのか。『世界は善に満ちている トマス・アクィナス哲学講義』(新潮選書)を刊行した東京大学の山本芳久教授は「中世の哲学書を読んでいると、現代人が抱いている日常的な悩みに対して、意外な答えが与えられることがしばしばあります」という――。 「甘いものを食べるかどうか」は哲学の問題 ——山本さんは、東京大学で哲学を教えているそうですが、そもそも「夜中に甘いものを食べるかどうか」なんて問題が、哲学のテーマになりうるのでしょうか? いかにして善く生きるか、どうすれば幸せになれるのか――これは哲学の中心的なテーマです。だとすれば、夜中に甘いものが食べたくなったとき、それを食べるか我慢するかという問題も、「善く生きる」ことや「幸せ」に深くかかわるので、哲学的なテーマと言えるでしょう。 私が専門とする西洋中世の哲学者トマス・アクィナス(1225頃~1274)も