「過労死ライン」という言葉を聞いたことがある人は多いだろう。月80時間の時間外労働が、その境界線に当たる。日本では中学校教員の約6割、小学校教員の約3割がそれ以上に働いている。やや乱暴だが、義務教育に携わる先生の2人に1人は、いつ倒れてもおかしくないのだ。教員はなぜこんなにも働き過ぎ、その末に命を落とす人が後を絶たないのか。誰もが通う学校という現場に横たわったままの「労働問題」を、考えてみたい。(神奈川新聞・佐藤将人) 元はアメリカンフットボールの選手で、教科はもちろん体育だった。好きな言葉は「闘魂」。指導は厳しいが、生徒のためなら何でもする、熱い先生だった。 大学時代から交際していた妻の祥子さん(52)は、笑って振り返る。 「学生時代は本当にアメフトばかりで。教職課程を受講しているのに、教員免許は取れないし、就職活動だって部活の片手間にやってダメ。4年生の12月に社会人チームを立ち上げる