大阪大学核物理研究センター 教授 中野 貴志 1.クォークとその複合粒子 クォークは、物質を構成する最小の基本粒子で、アップ(u)、ダウン(d)、ストレンジ(s)、チャーム(c)、ボトム(b)、トップ(t)の6種類があります。地球上で安定な粒子は最も軽いuクォークとdクォークだけで構成されていますが、加速器を使えばその他のクォークを実験室で生成することができます。 クォークの最も大きな特徴は、単独では自由に空間を飛びまわれないということです。実験で観測されるのは決まって複数のクォークからなる複合粒子でした。これは、クォークの運動の基礎理論である量子色力学(QCD)によれば、赤、青、緑の色電荷を帯びているクォーク間に働く力は距離に比例して大きくなるからと定性的に説明されています。この説明を受け入れれば、色電荷が“白色”に中和された複合粒子だけが決まった質量を持った粒子として(例え短寿命であっ