日本にヒップホップをもたらしたのは、映画『ワイルド・スタイル』の公開(1983年10月)と、それに伴うキャスト・スタッフを中心とした総勢30名あまりのプロモーションのための来日だというのが定説である。 1980年から2年を費やしてインディペンデントに制作された『ワイルド・スタイル』は、史上初のストリートのヒップホップの光景を捉えたドキュメンタリー/劇映画だ。しかし、実際には(今ではヒップホップとして知られている)ニューヨークはサウス・ブロンクスのストリートに起こっていた様々な現象ーー(ヒップホップの四大要素と後に名付けられる)ラップ、DJ、グラフィティ、そして、ブレイクダンスーーを、映画のなかで接ぎ合わせ(ヒップホップという)カルチャーを創りあげたといってもいい。 ヒップホップは、メディアのありようと切り離せない。ヒップホップは、サウス・ブロンクスという、権力やエスタブリッシュメントによっ
