矢野忠義氏は1968年に発覚したカネミ油症の認定患者。未認定患者の掘り起こしや救済の実現を求めて長年活動を続け、現在も油症医療恒久救済対策協議会の会長を務めている。 本書は2008年に他界した、認定患者の妻トヨコさんによる「カネミが地獄を連れてきた」(87年出版)の続編に当たる。トヨコさんの著書が絶版になっているため、第一部にその内容を転載。油症発覚から、原因企業のカネミ倉庫(北九州市)などに対する民事訴訟の和解(87年)、患者が受け取った仮払金の返還問題と解決、そして被害者救済法の成立(昨年8月)に至る半世紀におよぶ苦闘の貴重な記録となっている。 (書肆侃侃房・2100円) =2013/01/27付 西日本新聞朝刊=