定義集 [著]大江健三郎 『「伝える言葉」プラス』についで、朝日新聞紙上での著者の連載がまとまった。 そこには中野重治や井上ひさし、多田富雄やバルガス・リョサなど、様々な他者の言葉が引用され、意味や用法が“定義”されている。 六年にわたる連載の間、著者はかつての長編エッセイ『沖縄ノート』の記述をめぐって、それが名誉毀損(きそん)にあたるか否かを法廷で争わざるを得なかったわけだが、その折々の主張の核心を読むことも本書の意義であろう。 だが、長年の読者である私にとって何よりも特徴的なのはまず、このエッセイ集が徹底して“若い人たち”に向けられていることである。 「十五年後が生の盛りの、若い人たちに問いかけます」「漢語に慣れていない若い人のためにいえば」など、大江賞の創設も含め、著者は新世代に直接働きかけ、言葉を受け渡していく決意の中にいる。 もうひとつ重要なのは、本書にちりばめられた「アマチュア
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