(洋泉社・3360円) 著名な日本史学者の群像を描きつつ、20世紀の歴史学を振り返る。 特に力を入れているのが東京帝国大教授、平泉澄(きよし)(1895〜1984)だ。敗戦まで国粋主義的な「皇国史観」で歴史学界を席巻した。学外では近衛文麿首相や軍上層部との関係を深める一方、「百姓」を研究したいと申し出た教え子に「百姓に歴史がありますか」「百姓が何百万おろうが、そんなのは研究の対象にならない」と言い放つ、大衆蔑視論者であった。戦後の歴史学界では「蛇蝎(だかつ)のごとく嫌われ」た。著者は「口にするのもはばかられる」風潮が学界にあったという。 その平泉は大正期、外国の研究成果を取り入れる実証主義的研究で成果も残した。このため、平泉は途中で変節したとみるむきもある。しかし著者は、平泉の学問的立場は一貫していた、とみる。さらにはなぜ、当時のアカデミズムは平泉に有効な批判ができなかったのかを明らかにし
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