本書では自らの体を実験台にした奇人変人と呼ぶにふさわしい研究者が数多く登場する。血液、薬など医学を中心に17のテーマが収められているが、どこを読んでも驚きのエピソードにあふれている。 寄生虫を飲み込んだり、進んで感染症に罹ったりと、内容は多岐にわたるが、想像するだけで気持ちが悪くなりそうな実験例も少なくない。黄熱病研究ではアメリカ人の医学生スタビンス・ファースは感染経路を調べるために体に患者の尿を塗り、嘔吐物を摂取した。イギリスの外科医ジョン・ハンターは淋病と梅毒の関係性を知るため、淋病患者の膿を自分の性器に塗りこんだ。常軌を逸した行動に映るが、「自説は果たして正しいのか」ということに自らの体を賭けてでもこだわる研究者の強烈な自負も見え隠れする。 著者は彼らの功績はあまりにも評価されていないと指摘する。実際、嘔吐物にまみれたスタビンス・ファースの名前を誰も覚えていないのは事実だ。歴史に埋も