茅野市蓼科を仕事場にした日本映画界の巨匠、小津安二郎監督と脚本家の野田高梧さんが蓼科でつづった日記をまとめた「蓼科日記抄」が完成し、編さんを担当した刊行会(山内静夫発起人代表)は28日、小津監督ゆかりの蓼科の山荘「無藝荘」で出版会見を開いた。小津映画の誕生秘話を知る「最後の未公開一次資料」で、山内代表は「映画文化、日本文化のプラスにしてほしい」と願った。 刊行事業は刊行会事務局長の北原克彦さん(65)=原村=が18年前、茅野市で「小津安二郎記念・蓼科高原映画祭」を始めるために野田家を訪れ、蓼科日記を見たのがきっかけ。2007年の映画祭で野田さんの長女山内玲子さん(故人)が承諾したのを契機に、小津家からの了解も得て、編集を進めてきた。 小津組プロデューサーの山内代表と、小説家の故小津ハマさん、野田陽子さん(野田家)、松竹会長の大谷信義さん、茅野市の柳平千代一市長、矢崎和広前市長らが発起人
世界遺産の金閣寺と銀閣寺が、あるお金をめぐって国税当局と対立している。寺の写真を出版物に載せる際、発行元は「志納金(しのうきん)」を寺側に渡しているが、当局は「収益事業にあたる」として課税対象と主張。一方、寺側は「信仰対象をみだりにさらされないための自衛策」とし、課税されれば提訴も辞さない構えだ。 関係者によると、京都市にある金閣寺と銀閣寺は外観や宝物(ほうもつ)の写真の撮影を認めたり、出版物への掲載を許可したりした際、寄付金にあたる志納金を受け取っている。写真を貸し出した時も同様で、年間で計約2千万円に上るという。 公益性が認められる宗教法人は、不動産販売や金銭貸し付けといった34の収益事業を展開すれば課税対象となるが、宗教活動で得た収入は税金がかからない。 志納金も本来は非課税だが、大阪国税局は昨年6月の税務調査で「撮影を許可した建築物や貸し出した写真には著作権がある」と指摘。こ
俳人小林一茶(上水内郡信濃町出身)の作品を評する正岡子規の自筆原稿が25日までに、長野市戸隠の民家で見つかった。原稿の1枚目(写真)には「一茶の特色は主として滑稽、諷刺(風刺)、慈愛」などとつづり、訂正した様子も残っている。 明治時代を代表する俳人・歌人正岡子規(1867~1902年)が、上水内郡信濃町出身で江戸時代の俳人小林一茶(1763~1827年)の作品などを収めて1897(明治30)年に刊行された「俳人一茶」に寄稿した自筆原稿が25日までに、長野市戸隠の民家で見つかった。一茶の俳句を高く評価した内容がつづられている。子規記念博物館(松山市)によると、子規の自筆原稿は散逸するなどして現存数が少なく、全国的にも非常に珍しい。 同館によると、子規自筆の書簡や短冊は多数確認されているが、原稿は、同館が把握する限り20点に満たないという。 一茶研究家で子規にも詳しい矢羽(やば)勝幸・二松学舎
外国の書籍などを著作権者の許諾がなくても点字や音声データとして相互利用できるようにした国際条約が、モロッコで28日まで開かれた国連機関「世界知的所有権機関(WIPO)」(本部・ジュネーブ)の外交会議で採択された。従来は許諾手続きが煩雑なだけでなく、海外の出版社や著者に著作権料を求められるケースもあった。条約発効後は視覚障害者が海外の作品を楽しむ機会が広がるとみられる。 関係者によると、同会議で27日(現地時間)に日本を含む加盟185カ国の全会一致で採択された。各国が条約を批准、発効すれば、早ければ数年以内に視覚障害者向けの読書環境が改善する。 日本の著作権法では、日本国内で公表されている著作物については、点字に翻訳(点訳)する場合、営利・非営利を問わずに活用を認めている。音声データも点字図書館が制作する場合だけは、例外的に著作者の許諾なしで音声翻訳を認めている。 しかし、米国など海外に流通
経済産業省が中小出版社や東北の被災地への支援を掲げ、復興予算を投じた書籍の緊急電子化事業で、電子化された書籍の六割近くが出版大手五社の作品だったことが本紙の調べで分かった。中小からの申請が少ないため、大手に頼んで予算を消化していた。25%は東北と関係なく使われており、復興予算のずさんな使い方に疑問の声が上がっている。 この事業は「コンテンツ緊急電子化事業」(事業費二十億円)。東日本大震災で被災した東北で、中小出版社が電子書籍を作る費用を国が半額補助することで、電子書籍市場を活性化するとともに復興に役立てようと、経産省が二〇一一年度第三次補正予算に補助金十億円を計上。東京の社団法人「日本出版インフラセンター」(JPO)に事業委託し昨年度に実施された。
【赤田康和】出版取次会社で業界3位の大阪屋(本社・大阪市)に対し、ネット通販大手の楽天と、大手出版社の講談社、小学館、集英社と、大日本印刷が出資を検討していることが4日、わかった。 大阪屋の実施する第三者割当増資を、楽天を中心に引き受ける方向で調整している。出版不況が続くなか、大阪屋は東京支社の自社ビルを売却するなど経営の立て直しを急いでいる。楽天の物流システムを活用することで、注文品の書店への配送をより速くするなどの狙いがある。 楽天は、全国の書店約2千軒と取引がある大阪屋と組むことで読書好きの顧客との接点を増やし、ネット書店大手の米アマゾンに対抗するのが狙いだ。自社の専用端末コボを書店で販売することなどを検討する見通しだ。出版界の中枢でもある出版取次業にIT企業が本格参入するのは過去に例がないという。
山口県光市の母子殺害事件で、犯行当時18歳だった大月(旧姓・福田)孝行死刑囚(32)(殺人罪などで死刑確定)が、実名を記載した本の著者と出版元を相手取り、出版差し止めと約1300万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が30日、広島高裁であった。 宇田川基裁判長は、被告側に計66万円の損害賠償を命じた1審・広島地裁判決を取り消し、大月死刑囚の賠償請求を棄却した。出版差し止めについても認めなかった。 増田美智子さん(32)(東京都)が執筆し、「インシデンツ」(同)が出版した「福田君を殺して何になる―光市母子殺害事件の陥穽(かんせい)―」。大月死刑囚が差し戻し控訴審で死刑判決を受け、上告中だった2009年10月に出版され、大月死刑囚の実名や顔写真、知人への手紙などが掲載された。 1審判決は、大月死刑囚の中学卒業時の顔写真を掲載したことや、大月死刑囚から受け取った手紙を無断で週刊誌の記者に提供した
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