〈巷説百物語〉シリーズの11年ぶりの新作『遠(とおくの)巷説百物語』が刊行された。一癖も二癖もある連中が様々な厄介ごとを「化け物退治」として落着させる時代小説のシリーズだ。柳田國男『遠野物語』で知られる遠野を舞台にした新作について、世界妖怪協会・お化け友の会代表代行でもあり、妖怪に関する造詣が深い著者の京極夏彦氏に話を聞いた。(8月14日取材) 【写真】トレードマークの指ぬき革手袋をはめた京極夏彦 ■『遠野物語』が書かれた時点で日本民俗学はまだない ――『遠巷説百物語』は、KADOKAWAの雑誌『怪と幽』に2019~2020年に連載されたものです。このシリーズは同誌の前身『怪』にずっと掲載されてきましたし、他の小説を書くよりその新作を書くほうがいいと思ったのですか。 京極:思いませんでした(笑)。僕は別に書きたいものなどありませんので、仕事としてお受けして、依頼にお応えしただけです。〈巷説